本音と嘘
第43話
20時 神林栞の家 栞の寝室。
『お掛けになった電話番号は、電話が切られているか、電波が届かないところある為掛かりません』
今日だけで何回聞いたであろう音声メッセージに耳を澄ませながら、栞は流れ作業のように通話終了ボタンを押す。
「來未、どこにいるの?」
瞳には微かな涙が流れる。
今日の朝、何も言わずに、荷物と手紙だけ(カード付き)を残して姿を消してしまった來未。
消えてしまった原因はきっと…
_コンコン_ 扉を叩く音。
「栞。ちょっといい?」
扉を叩く、匠さんの声に黒くなったスマホ画面を見つめていた栞は、ゆっくり顔を上げながら匠の名前を呼ぶ。
「匠さん?」
「部屋、入っていい?」
匠の要望に、栞はまだ気持ちの整理が出ていないからと今は無理と断ろうとしたら…扉の外から匠の声が聴こえてきた。
「じゃあ、そのままでいいから訊いて?」
「栞。僕だって、來未ちゃんが何も言わずにいなくなったのは、確かに寂しいし、悲しい。けど、來未ちゃんはいなくなった事に、栞、僕達の結婚は絶対関係なし、來未ちゃんもそんなことは望んでない! だって、二人は親友なんだろう」
匠の言葉に、下を向いていた栞は……扉の外にいる匠に向かって……
「…匠さん。わたし……」
「…栞、夕飯ここに置くとからあとでゆっくり食べてね?」
「たた匠さん!」
栞は、彼を呼び止める為に慌てて扉を開ける。
しかし、もうそこに匠の姿はなく、代わりに卵サンド(白い皿)とホットレモンがお盆の上に置かれていた。
「…美味しい」
栞は、卵サンドを手に取り一口頬ぼると目に涙を浮かべながら美味しいと一言呟いた。
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