第41話
「……はぁ?」
逃げる様に二人から離れた浅井は、冷たい風が吹く中、5分も何もしないまま立ちすくんでいた。
この日の気温は8℃。
なので、rose制服だけでは寒い。
「くしゅん」
その証拠にさっきから咳が止まらない。
「新しい健康法?」
「!」
声に気づきうしろを振りかえると紙コップを二つ持った真理華が扉の前に立っていた。
「……宇野!」
「まぁ? あんたの事だから、さっき如月に言った言葉を気にしてるんでしょ!」
「んっ?」
図星を突かれて言葉を詰まらせる。
「やっぱりねぇ? はい! コーヒー」
「ぁぁありがとう!」
宇野から紙コップに入ったブラックコーヒーを受け取り一気に飲み干す。
「それにしても、あんたもバカねぇ? たかが噂話にあんなに本気になれななくても。もしかして、あんたも本当は気になってるの! さっきの話?」
「まぁなぁ? もとわと言えば、自分のせいだしなぁ?」
最初にあの話の聞いたのは自分。
そして、それを二人に話したのもまた自分。
だから、自分のせいと言っても過言でもない。
(まぁ……同じ女性としたら気になる内容ではあるけど?)
宇野は、浅井の言葉に彼に聴こえない程の小さなこえで返事を返す。
「ん? なにか言ったか?」
「なにも? でもまぁ? 例え、あんたのせいだとしても、もう気にすることないんじゃない! あんたもさっき如月にそう言ってたじゃあん」
「それはそうだけど?」
まだ納得いかない浅井。
「はぁ……先輩には口止めされたけど。浅井!」
「ううう宇野!」
突然、顔を近づけてきた宇野に驚く浅井。
しかし、そんな事を気にしない真理華は彼の耳元に向かって……
「七橋先輩は、来月今の婚約者と結婚する。だから、どっち道、瀬野明希さんとは復縁どころか結婚すらできない。それに、二人の関係は10年前にとっくに終わってる」
「どういう事?」
なんでそんな事をお前知っている?
浅井が不思議そうに宇野の事を見つめる。
「兼城先輩に訊いてたの? 先輩? 瀬野明希さんと10年来の親友なんだって? そして、ここだけの話七橋先輩との交際を掛けて二人で戦ったんだって。まぁ? 結果は、兼城先輩のボロ負けだったらしいけど」
「へぇぇえええええええええええええええええええええええええええええええええええええええ」
宇野、突然叫ぶ出した浅井の声に驚き耳を塞ぐ。
「ごめんごめん。っていう事は、七橋先輩と兼城先輩、そして、瀬野明希さんは七橋先輩を奪い合う恋敵だった事?」
「そう? でも、七橋先輩は来月結婚するから。二人とも振られちゃったね? 可哀想に? 兼城先輩にしたら2度も失恋?」
はぁ……身内の恋愛の縺れに、10年前の恋を未だに忘れらない元カレ。
それにしても七橋先輩はモテるなぁ? 羨ましい。
俺は、未だに……
「……浅井?」
「なぁ? 宇野?」
「なに? あぁもしかして! 寒い? あぁそうだよえねぇ? ちょっと待ていま…」
新しいコーヒー取ってくるから言おうとしたら、突然、浅井のよって唇を奪われた。
「!」
「……好きだ」
唇が離れる。
「……浅井」
「俺と付き合って欲しい」
「ごめんなさい。浅井とは付き合えない。他に好きな人がいるの」
宇野は、浅井にそう告げると、コーヒーを取りに店の中に戻っていった。
そして、浅井は、その場にしゃがみ込む、自らの手で左頬を殴った。
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