第39話

20時 キッチン 

「チョコレートはこれぐらいでいいかな?」

 兼城薪は、静まり返ったキッチンで、一人板チョコレートを鍋で溶かしている。

 如月は、ホール担当者である宇野達の片づけを手伝っている。

 兼城は、板チョコ(ホワイト・普通のチョコ)それぞれに、スプーンを入れ味を確認する。

「うん。隠し味に少し入れたハチミツと生クリームがいい味を出してる。ん…でも、ホワイトチョコにはいれなくてよかったかな? まぁ? いいか? 試作品だし? うんん」

 兼城は、自分にそう言い聞かせて鍋をコンロから下ろし、先に焼いておいたクッキー(クリスマスツリー型に型抜きした)を入れた型の中に、均等にチョコを流し込んでいく。

※クッキーは「rose」で出しているバタークッキー。

 そして、最後の一枚に残ったチョコ全てを流し込み、全てのチョコクッキーを完成させ、お盆に全て移し替え、冷蔵庫に入れる。

「…長かった。でも、これでようやく帰れる。今度のクリスマスイベントの限定デザートは、フルーツパフェとフルーツゼリーの二つで行くって言ってたくせに、今日になっていきなり、やっぱりチョコクッキーも出したいから今日の仕事終わりにも試作よろしくって。全く店長には勘弁して欲しいよ!」

 自分と如月に一方的に注文だけして帰っていた樹に文句を言いながらも、これで、今日の仕事は全部終わり。あとは、この作業で使った道具を片付けるだけ。

「さぁって…もうひと踏ん張り」

 兼城は、大きく両腕伸ばし背伸びをすると、洗い物をする為に服の袖を捲った。

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