第19話

12月11日 0時 栞の家 匠の寝室。

「…おかえり」

 匠が風呂に入る前に、明日朝から仕事だから先に寝ると伝えてきた栞が、寝ることなくベットの上で自分の帰りを待っていた。

※普段は、二人の仕事の関係で別々の寝室で寝ている。

 しかし、今日は、來未ちゃんが、急きょ栞の寝室に泊まる事になったので栞と二人、同じでベットで寝る事にした。

 最初は自分はリビングにあるソファーに寝るから、栞が僕のベットを使ってと提案した。

 でも、それは、栞からの怒りのお説教によりすぐになくなり、久しぶり彼女と同じベットで一緒に寝る事になった。

「栞! 先に寝たんじゃあ」 

「そのつもりだったんだけど…」

「栞? なにかあった?」

 匠は、ベットの上に上がりしおりの隣に座ると彼女の髪をそっと撫でる。

「匠さん。私は、來未のために何もしてあげられなかった。來未は、あんなにも総一郎さんのことを愛していたのに…私は…」

「…栞」

 大好きな親友のために何もできなかったことを後悔する栞。

 匠は、そんな栞の言葉を黙って聞く。

「匠さん。私は、來未には幸せになって欲しかった。だって…」

 だって、來未が恋人に裏切らるのは今回が初めてじゃあないから。

「なんでいつも來未ばっかりが不幸にならないといけないの! あの子は…」

 いつだって純粋に彼のことを好きになって、幸せを掴もうとしただけ。

 それなのに…いつもなんで來未ばっかりが不幸に鳴らないといけないの?

「…栞。來未ちゃんなら大丈夫だよ!」

「…匠さん?」

「來未ちゃんは、君が思ってるより弱い人間じゃあない。それより、自分のことで栞、君が悩むことを彼女は望んでないと思うよ」

「でも…私がもっと來未の相談に…ったたた匠さん!」

 匠が栞の両頬を自分の両手で軽く押す。

「…栞! それ以上はダメ!」

「匠さん。でも…」

 本当は、明日、來未ちゃんを思い止まらせる為にも、彼女がいる前に栞にプロポーズをするはずだった。

 小さな複数の色違いのダイヤと桜の花びらが後ろに刻印されたシルバーの婚約指輪が入れた指輪ケースを枕元に隠したあったブック型の収納箱の中から取り出すと栞の薬指にそっと嵌めた。

「栞、いやぁ…神林栞さん。俺と結婚してください」

「…はい」

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