第14話
20時15分。 栞の個室兼寝室。
風呂から上がった來未は、いつの間にか匠さんと栞が持っていてくれたスーツケースの中身を整理する為に栞の部屋にやってきた。
服装は、黒のニットワンピース。
整理すると言っても別に何もケースから出すものはない。
スーツケースの中に入っているのは、殆んどが衣服と化粧品。そして、初めてのデートの時二人で買ったお揃いの小さなテディベア。
本当は、この子も彼の家に置いてくるはずだった。
でも、できなかった。
きっと、彼はもう忘れてしまったかもしれないけど、このテディベアは、総一郎さんが私の為に選んでくれた最初で最後のプレゼント。
だから、どうしてもこの子だけは置いてくる事ができなかった。
けど…もう…あの時の総一郎さんはいない。
(お前とは、ただの遊び!)
來未は、彼から貰ったテディベアを抱きしめながら泣き始めた。
「総一郎さんのバカ! 総一郎さんなんか…総一郎さんなんか…」
★
「來未片付け終わっ…」
リビングに居るはずの栞が部屋に入ってきた。
そして、部屋の真ん中でテディベアを抱えたまま泣いている來未を発見し、そのまま彼女を抱きしめた。
「來未は何も悪くない! 悪いのは來未の事を振ったあいつだよ!」
「ありがとう! でも…私…やっぱり総一郎さんが好き! 別れたくないないよ! 別れたくないよ!」
自分の胸の中で泣き喚く來未に栞は何も言えなくなってしまった。
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