第12話

『兼城君。私ねぇ? ○○との恋を終わらせようと思うの。○○が向こうに行ってから2年も経つし、それに今日、常連客の古橋さんにご飯に誘われたの』

 七橋は、自分は恋愛に向いていない。寧ろ、恋をするべき人間ではないと常々口にしていた。

 きっかけになったのは、きっと初恋のあいつのせいだろう?

 七橋の初恋は、あいつの突然の海外留学で自然消滅の形で終わってしまった。

 いやぁ? 恋自体を終わらせたのは七橋の方。

 彼の友人は、七橋に彼の帰りを待っていて欲しいと頼んだらしい。

 でも、どんなに待っても連絡すらこない彼に、七橋の方が辛くなって、彼女の方から彼との関係を勝手に終わらせたらしい。

 そして、常連客だった古橋総一郎と告白され、2年前からは彼の家で同棲をスタートさせていた。

 それなのに…

『藤井君! 何かわからない事があったら遠慮なく聞いてねぇ?』

 七橋先輩は、僕が困っているといつも優しく声を掛けてくれた。

 そんな先輩に僕はいつの間にか恋ごろを抱くようになっていた。

 けど、先輩が店の常連客だった古橋さんと交際するようになってからは、先輩への恋心は自分の心の中に閉まって先輩の恋を友人の一人として応援していた。

 それなのに…

 あの男は…

 七橋を…

 先輩を…

 ゴミのように捨てた。

 だったら…

 俺が…

 僕…

 あいつを護る。

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