第7話
「お待たせしました!」
会計を終え、外に出ると近くの木のベンチで草津が缶コーヒーを飲みながら自分の事を待っていた。
「あぁ! こちらこそ、買い物の邪魔してすみませんでした」
「そんなの気にしなくて大丈夫ですよ? 迷うのはいつもの事ですから。隣座っていいですか?」
「どうぞ!」
「ありがとうございます。コレ草津さんもよかったらどうぞ?」
いつまでも煮え切らない草津に杏奈は、レジ横で売っていて、いつも美味しくて買う気がなくてもあるとついつい買ってしまうあげ唐揚げ君(レモン味)を容器についていた爪楊枝と一緒に差し出した。
「えぇぇぇでも、それは…」
杏が差し出してきた唐揚げを断ろうとしたが、草津はまだ杏奈の名前を訊いていなかったことを思い出す。
「あの? お名前伺ってもいいですか?」
「ぁぁ! 私ったら、草津さんの名前だけ伺って、自分の自己紹介がまだでしたね? 茉莉川って言います」
(…茉莉川さん。いやぁ? まさか…)
杏奈の名前を訊いた途端黙り込む草津。
「…草津さん? どうかしましたか?」
自分の名前を訊いた途端黙り込んでしまった草津を心配する杏奈。
それから1分間、どんなに杏奈が草津の名前を呼んでも返事はかえってこなかった。
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