第8話

「…茉莉川さん? 下の名前はなんとおしゃるんですか?」

 草津が黙り込んで2分後、ようやく口を開いたこと思ったら、何故か自己紹介をしたはずなのに下の名前まで教えて欲しいと言ってきた。

「しししし下の名前ですか? あぁ!」

 杏奈は、草津からの突然の要望に一瞬、手に持っていたあげ唐揚げ君を地面に落としそうになる。

 だけど、寸前の所で踏ん張り、どうにか持ちこたえた。

「茉莉川さん大丈夫ですか?」

「あぁ! すみません大丈夫です。あぁ! 下の名前ですよね?」

 唐揚げ君を落とさないようにビニール袋に戻す。

「はい! 茉莉川さんがご迷惑じゃあなければ。あぁ! ちなみは、自分は千の明かりと書いて千明(ちあき)って言います」

 杏奈は、千明と言う名前に再び、千里の顔を思い浮かべる。

 だか、それもまた一瞬ですぐに、偽りの笑顔をつくり、草津に改めて唐揚げと…偽りの名前を告げる。

 「亜那です。茉莉川亜那まつりかわあなです」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る