第80話




「悪いか?」



「いや?でも、珍しい光景だったからね。」




肩をすくませた朔が、手に持っていたビール瓶をテーブルの上に置いた。




「兄貴、初めてじゃない?」



「何がだ?」



「女に執着するのが、だよ。」




くすりと笑う朔。




「…………あいつは、特別だ。」




俺は一気に酒をあおる。






あいつだけだ。



俺を強くも、


…………弱くもさせる存在は。




「莉茉は、俺の唯一無二の女なんだよ。」



あいつの代わりなんか、他にはいない。

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