第79話




「兄貴。」




莉茉との先の未来を思い浮かべていた俺を、朔の声が引き戻す。




「酒が無くなってるよ?」



「…あぁ。」




視線を落とせば、空っぽになったコップ。




「ほら、注いであげる。」




ビール瓶を片手に、俺に近寄る朔が隣に座る。




「悪いな、朔。」




コップを差し出す俺に、苦笑いを浮かべ朔が酒をゆっくりと継ぎ足す。





「兄貴、ずっと見すぎだよ。」



「見すぎ?」



「そう、莉茉さんの事。」





にやりと意地悪く笑う朔を半目で見つめた。

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