第54話

『俺だ』

『社長、一之瀬です。月見坂から連絡貰いました』

『一之瀬、いまどこだ』

『社長! 訊いてください』

『一之瀬何があった?』

『彼、一夜零くんが突然動かなくなりました』

『!?』

『社長?』

『あぁ! 一之瀬! 何があったかちゃんと説明しろ』

『俺が悪いです』

『はぁ? それじゃあ意味が分からん』

『俺は、彼の絶対触れてはいけない逆鱗に触れました』

『……一之瀬!』

『……はい』

『今すぐ彼を連れてこい。それと通信はこのまま繋いでおけ』

『……わかりました』

 その言葉を最後に、一之瀬の声は聞こえなくなった。

 黒鳥は、声が消えたと同時に机に置いたファイルを手に取り、中から資料をもう一度取り出した。

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