alone 一人で

第49話

『零くん? 顔色悪いけど大丈夫?』

 名前を呼んだのに全然次の言葉を言わない零に、遼がインカム越しに心配そうな声で尋ねてくる。

『……』

 けれど、零が何も返事を返さないので、遼は続けて言葉を発する。

『……もしかして、まだ僕達の事、信用できない? あぁ! もしかして、悩んでる? このままこの人たちに関わっていいのか?』

『!?』

(考え読まれてる?)

『その顔は、当たりかな? でも、そうだよね。君はまだ、十三歳。それなのに家族亡くして、自分一人で生きていこうとしている。そんな君が、いきなり目の前に現れた、訳も分からない大人を信用しようなんて無理だよね? でも、信じて欲しい』

(えっ!)

 突然、零に向かって頭を下げる遼。それも、土下座。

_五秒後_

「……一之瀬さん。顔あげて下さい」

 土下座をしていた遼がゆっくり顔をあげる。

「零くん!」

(ここまで相手がしたんだから、自分も本当の気持ちを彼に伝えた方がいいよね? でも、直接彼の目を見て言うと、が怖そうだからインカム越しで)

 大きく息を吸って、ゆっくり吐き、呼吸を整えるとインカムに向かって話し始めた。

本当の気持ちを。

『一ノ瀬さん。自分もあなた方を信用したいです。自分には、いまお金が必要なんです。その為に自分はバイトを捜しています。そして、偶然見つけたのが、このBlack Bird の捜し物専門の探偵募集のチラシでした。社長の黒鳥さんには、自分の過去を話しました。彼の熱意を訊いて信頼できると思ったからです。けど、いまは、自分の過去を話した事を後悔しています。それは、あなた方が嘘をついているからです。一ノ瀬さん。Black Bird は、普通の捜し物専門の探偵事務所ではありませんね? あと、一之瀬さん達もやっぱり、普通の捜し物専門の探偵ではありませんね? だって、そうじゃないなら自分が、その質問をした時にだけ、顔色が変わる訳ないですもんね? それ以外は、笑顔だったのに、この時だけ舌唇噛んでましたよね?』

『______________________やっぱり、君ってすごいね。社長が会いたがる訳だよ。そうだよ。僕は、君に嘘をついている。けど、その答えは、僕より、本人に訊きな』

 零の本音と言う推理に関心した遼は、ニコッと零に一瞬、笑顔を見せると、スッと立ち上がり、自分の左手を零に差し出す。

「一夜零。Black Bird 社長、黒鳥恭輔があなたを待っています」

 ☆

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