第35話

「では、框様、改めて依頼内容について、確認させて貰って宜しいでしょうか?」

 一夜君と蜩さん、そして自分という配置で座り直し…但し、この車の後部座席には椅子がない。

 なので、朧と零は、それぞれ運転席と助手席に座り、翔吾は、彼らが用意した衣装ケース兼椅子に腰かけた。

「あぁぁはい!」

 翔吾は、改めて染島隼人から送られてきたメールに添付されていた穂積の写真を改めて零と朧に見せる。

 すると、写真を見ていた零が何かを思い出したかのように、翔吾にこう尋ねた。

「そう言えば、この染島隼人様のメールにはもう一人、逸見ゆかりさんと言う女性の名前を書かれていましたけど、女性お知り合いなんですか?」

 いきなりゆかりの話題を振られ思わず言葉が詰まりそうになるがどうにか寸前の所で堪え、目に涙を浮かべながら嘘の作り話を語り始める。

「…えっ? ぁぁ……逸見ゆかりさんとは中学校時代の同級生です」

「そうだったんですか? じゃあ、今回のお友達からのメールはびっくりしたんじゃあないんですか?」

「はい! とてもびっくりしました。彼女は、そんな人ではなかったので、なので、お願いします。二人を助けて下さい!」

 翔吾は、二人に向かって頭を下げる。

「…解りました。天童さん。そして、ゆかりさんの事も俺達が絶対救い出しますから!」

 翔吾の作り話にまんまと騙され、もらい泣きいした朧が翔吾の両肩を掴む。

「お願いします!」

「任せて下さい! なぁ零!」

 同意を求める様に零を見る。

 しかし、零からは驚きの回答が返ってきた。

「あぁ! じゃあその為にも、天童穂積って男の居場所を早く見つけ出さないとな? 框様、この写真がどこで撮影されたか解りますか?」

「そこまでは…あぁちょっと待って下さい!でも、この写真を撮影した染島ならどこか解るかも知れません! ちょっと電話してみます」

 翔吾は、二人に断りを入れると、零に貸して貰ったばっかりのスマホで染島に電話を掛け始めた。

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