第34話
「って、俺がチーズ食べれないからって、普通チーズバーガー選ぶか?」
ハンバーガーを口いっぱい頬ぼりながら、苦手なだけで食べられないないわけではないチーズバーガーを食べている朧に苦言を呈する。
「なんで? お前がチーズ苦手なだけで、俺は、チーズバーガー好きだし、食べたし。それを言うなら、お前、食べ物買ってきてって言うだけで、何食べたいか言わなかったじゃあん」
「言わなくても、相棒だったら、俺が食べたい物ぐらい解るだろう!」
「解りません! 俺、そこまでお前の好み把握してないし、それに、そこまで言うなら、俺に頼まないで自分で買えよ!」
「あぁ! そうですか? もう、お前には頼まねぇよ!」
「俺だってお前の為にもう1円も出さないよ!」
「蜩さん! 一夜君! とりあえず二人とも落ち着いて下さい! 一夜さん! 食べたいものがあるなら僕が買ってきましょうか?」
翔吾は、二人の間に割って入る。
そして、零に、自分が奢りますからっと宣言した。
「…言いましたね?」
「えっ?」
零は、翔吾の両手を掴む。
「じゃあ、candy(飴)が食べたいです」
「飴ですか? ちょっと待って下さいねぇ? 確か…あったあった」
翔吾は、持ってきたカバンの中を手を入れると、カバンの一番下から飴が入った袋を取り出す。
(ちょっと待って? 一夜君ってそもそも梅干大丈夫? んんんんん?)
翔吾が、零が梅味が好きかどうか飴を手に持ったまま頭を抱えていると零が袋を突然掴んできた。
「一夜さん!」
突然の出来事に翔吾は、びっくりして零の顔を見る。
「…框様! それって! ホワイト製菓で先月まで限定発売されてた梅アリスですよね?」
「…あぁはい」
1週間前、湿布を買いに近所のディスカウントストアで行った時、安売りしているのを偶々見つけ、大好きな梅味だったのもあって店に残っていた分(4袋)全て購入した。
しかし、翔吾にとっては、どこにでもある普通の梅味なので、なんで零がここまで興奮しているのか解らない。
「すみません! 僕、そこで発売されているハチミツレモ子ちゃんが大好きなんです。あぁ! 勿論! 梅アリスも大好きですよ!」
「…そうなんですか? けど、これ? ハチミツレモ子ちゃんじゃあなくて…」
「框様、自分、梅味も本当に好きですから! あの? その飴一つ貰ってもいいですか?」
零は、翔吾はカバンに戻そうとした渡そうとした梅アリスを下さいと彼に申し出る。
しかし、断固して翔吾は、渡そうとしない。
「…框様。自分もその一つ飴頂いてもよろしいでしょうか?」
「…蜩さん。でも…」
二人の会話を黙って聞いていた朧が零に聴こえない様に優しく声で翔吾に問いかける。
『一人で舐めるよりも、皆で舐めた方がきっとおいしいですよ? それに、我儘な奴には、甘いものなんて贅沢です。あんな奴には酸っぱいものでも食わせておけばいいんです』
朧の口から飛び出した爆弾発言。
しかし、その言葉の裏に、零への愛情を感じ取った朧は、カバンに戻そうとしていた飴袋の中から梅アリスを2個取り出すと、一個を朧に、渡し、もう一個を零に渡した。
(この二人は、口には出さないけど、お互いの事をちゃんと信頼してるんだ)
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