第33話
「あぁ!おかえりって? 框様、どうかしましたか?」
「…あぁぁの?」
朧と一緒に零の待つ、彼らが乗ってきた黒いワゴンに乗り込んだ翔吾は、後部座席を見るなり、車内の光景に驚いた。
後部座席には後部座席はなく、その代わりに収納ケースにもなる椅子が2個、そして、うしろの窓に立てかける様に鞘に入った2本の刀と2丁の拳銃が置かれていた。
(コレ? 本物じゃあないよなぁ)
いやぁ、そんなはずがない。
いまのご時世、本物の刀や銃銃なんかを個人的に持っていたら銃刀法違反で警察に逮捕される。
だから、これは本物に真似た模造刀とおもちゃの拳銃に違いない。
(うん! そうに決まってる!)
翔吾は、そう自分に何度も言い聞かせた。
「框様! どうかなされましたか?」
入ってくるなり、黙り込んでしまった翔吾を零が不安そうに声を掛ける。
「なぁななんでもないです!」
急に零にはなし掛けられ、言葉が一瞬おかしくなる。
しかし、どうにか持ちこたえる。
「そうですか? あぁそうだ! 框様! うしろに置いてある刀と拳銃には手を絶対手を振れないで下さいねぇ?」
「ままままままささか本物なんですか?」
今まさに、考える事をやめ、なんなら忘れようとしていた拳銃と刀の存在をまさかの零の方から振れら、思わず本物なんですかと叫んでしまった。
しかし、すぐさま……二人の表情……いやぁ零の表情を見て言葉を失う。
零が自分に向けて拳銃の銃口を向けていたからだ。
「お試しになりますか?」
「おい! 零!」
朧が慌てて零から拳銃を奪い取り、翔吾に向かって頭を下げる。
「框様すみません! おい! 零! お前も謝れ!」
「すみませんでした」
朧に言われ、翔吾にいやいやながら頭を下げる。
「朧さん! 自分なら大丈夫ですから!」
謝ってくる二人……いやぁ、主に朧に両手を振りながら大丈夫ですと返事を返す。
「……そうですか? 框様がそうおっしゃるなら。けど、框様のおっしゃる通り、刀と拳銃は本物です。ただし、安全装置を解除しないと使用できない仕組みになっているので安心してください」
「!」
安心できない。
それより、なんで零くんが表情を変えずに拳銃を構えてるんだ。
ままままままささか……
(この子、銃? 撃ってことある。いやいや)
翔吾は首を左右に振る。
(この子……一夜零君は、見た目こそ怖いけど、自分よりも10歳も年下だぞ! それに……ここは日本だ! そうだ! ここは日本なんだ!)
翔吾は、自分を納得させるかのように何度もここは日本だと心の中で叫んだ。
「一夜君は、蜩さんの事をどう思っているんですか?」
強引に話題を変える。
「…朧の事ですか? 偶にむかつく事もありますけどいい相棒だと思いますよ? あぁそうだ! これ? 勝手に持って行ってすみませんでした」
零は、翔吾の言葉になにかを思い出したのか、スーツのジャケットからスマホを取り出し彼に返す。
「ぁぁぁありがとうございます! あぁ! そうだ……一夜さ」
零からスマホを受け取りながら、もう一度、今の言葉では表面上では納得しながらも、自分が訊きたかった言葉が訊けなかったので改めて質問しようとしたら…
「二人ともちょっと早いけどお昼ご飯にしませんか?」
「ひひひ蜩さん!」
驚く、翔吾を無視して、紙袋から自分用のチーズバーガーとホットコーヒーを一緒に取り出し、一個を翔吾に渡す。
「はい! 零、お前も分!」
そして、一個残ったハンバーガーとホットコーヒーを零に渡す。
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