第32話

{ごめん翔吾。二人の事で手いっぱいで、男達の顔までは、はっきり見てないんだ。でも、彼らの雰囲気からして普通の人間ではないと思う。それに、ゆかりちゃんが、その中のリーダー格の男に向かって、全部は聞えなかったけど微かに…killer って? なぁ? 翔吾? 大丈夫だよなぁ? ゆかりちゃん! 逮捕されたりしないよなぁ? あぁ勿論。天童も}

「…」

 翔吾は、相棒の為にフードコード内に食べ物を買いに行った朧を待つ間、染島隼人に例のメールの内容について新たに質問していた。

 ※翔吾は、2台スマホを所有している。そして、零が持って行っていったスマホは、翔吾が普段、仕事で使っている仕事用のスマホ。

 しかし、彼から帰ってきた返事に書かれていた返答に、翔吾は、驚きを通り越して動揺していた。

 killre の日本語の意味は、「殺し屋」

 でも、この単語だけでゆかりが犯罪に加担しているとは限らない。

 もしかしら、そのリーダ核の男に脅されているだけ…いやぁ? 絶対そうだ! ゆかりがそんな事…

(いやぁ? 俺にそんな事言う資格なんてないか? 俺は…)

「框様、お待たせしました」

 買い物を済ませてフードコートの外で待つ翔吾の元に戻ってきた朧は、スマホ画面を見ている彼に近付き声を掛ける。

「あぁあぁぁ蜩さん! おおおおおかえりさん」

 いきなりの朧の帰還に、隼人からの返信メールにショックを受け、どう返信を返せばいいか悩んでいた翔吾は驚き、思わず声が裏返る。

「すみません。でも、そこまで驚くとは思わなくて、すみません」

「蜩さん! 違うです! 蜩さんの呼びかけに驚いた訳ではなくて…あの?」

「はい?」

「蜩さんは…あのその…一夜君とは、コンビ長いんですか?」

 話題を急に変える。

「零とですか? あいつとは、コンビを組んでまだ2年ちょっとです。あぁ! もしかして、他のコンビがよかったですか? そうですよね? 零はいいとして、自分はまだ先輩補佐ですから」

 blackBart 内の朧の階級は先輩を補佐する先輩補佐。

 但し、朧の場合は、blackBart に入る前から当時先輩補佐から本探偵に昇格したばっかりの零とコンビを組む事が社長の独断で決まっていたので、見習い期間なしでそのまま零と同じ本探偵に異例の昇格を果たした。

 でも、当時の俺は、あくまで零の補佐的な役割で余り仕事をさせて貰えなかった。

 それどころか、異例の入社と同時に見習い期間なしの本探偵昇格だったので、最初の頃は先輩たちを始め、事務所全体から醸し出されるなんで社長はあんな子を……と言う視線がすごく怖った。

 その中でも、普段から常に片目を髪の毛で隠している月見坂先輩がとくに視線がとくに怖かった。

「…蜩さん?」

「あぁ! すみません。じゃあ、買い物も終わったので零の所に行きましょか?」

 そう翔吾に告げると、朧は、紙袋を持って駐車場がある方向に歩き出した。

「ひひひ蜩さん! ちょっと待って下さい!」

 翔吾は、スマホをバックを戻すと慌てて朧のあとを追い掛けた。

_5分後_

「零! ご飯買ってきたぞ!」

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