第3話

『朧! あとは任せた!』

 コーヒーを飲んでいた朧のインカムに、零の声が届く。

『あぁ!』 

 朧は、零に一言返事を返す。

 すると、その5秒後、自分の目の前に天童穂積が現れた。

 朧はその姿を確認すると飲んでいたコーヒー缶をゴミ箱に捨てながら、彼に声を掛ける。

「天童穂積!」

 自分のフルネームをいきなり呼ばれ、その場に立ち止まってしまった。

 不意に、自分の名前を知っていた男性と目が合ってしまう。

 男の恰好は、ダークブラックのスーツに白シャツに赤いネックタイ。そして、スーツと色を合わせたダークブラックの靴。

 穂積は、一応警戒しながら声を掛ける事にした。

「いま、自分の名前呼びましたか?」

「はい。天童穂積さん」

「…あの? どこかでお会いしたことありましたっけ?」

 相手をこれ以上怒らせない様に、そして、もしかしたら、自分が忘れているだけで相手は自分を知っているかもしれないので言葉を選びながら返事を返した。

 しかし、相手から帰ってき言葉は意外な言葉だった。

「いいえ。お会いするのは今日が初めてです」

そう穂積に告げるといきなり腕を掴んできた。

「なにするんですか離してください! 警察呼びますよ!」

 いきなり腕を掴まれた穂積は、振り払おうとするが、それを上回る強い力で穂積の腕を掴んでくる。

「自分は、別に困りませんけど? そちらはよろしいんですか? 警察に来られたら困るんじゃないんですか?」

「……」

 彼の言う通り、いま、警察にここに来たら会社だけじゃあなくて……

「なにが聴きたい?」

「それは貴方の解答次第ですかな? あぁもし……」

 朧の手を離した事で隙を見て逃げようとしていた穂積は、朧の言葉で思わず後ろを振り返る。

「自分を腕を振り払ってこの場から逃げようと思ってるなら辞めた方がいいですよ?」

「!」

 すると、さっき自分に道を尋ねたきた三つ編み女の子か立っていた。

「お兄さん? また会いましたねぇ?」

「お前……」

 穂積は、全て悟った。

 俺は、この女の子に嵌められたんだ。

 そして、いま、自分の目の前にいるこの男も…

 しかし…三つ編みの女の子が男性に発した言葉で状態は一変した。

「おい! お前がいつまでもクヨクヨしてるから、俺がもう一度出てこないといけなったじゃあないか! おい! お前、ちょっと顔貸せ!」

「おい! 零! 手荒な真似は…」

 強引に穂積を連れていこうとした零を慌てて制止しよとしたが、零の表情を見てその手を離す。

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