第36話
(まったく、あいつ俺の事を何だと思ったんだよ。まぁ、貰ったものは、使わせて貰わせますけど……けど、なんだよ。悲恋って、もっと、ましなタイトルにしろよ)
早瀬が自分を傷つけたと強引に詫びとしてに渡してきた映画のチケット。それも、何故か二枚。
_ヴヴヴヴヴヴヴヴヴヴヴヴ_
映画のチケットを眺めて、このチケットを渡してきた早瀬に対する文句を言っていると、瑞穂からさっき送ったメールの返信が返ってきた。
from 蜩朧
題名 謝罪と訂正
向日葵公園って朧君の地元なんだ。いいなぁ!
近所にあんな公園があるなんて羨ましい。
あ~ぁ。公園の話じゃなかった。ごめん(^^)
集合場所も時間も大丈夫だよ。
明日、楽しみにしてるね。
また、明日ね。
★
「また、明日ね」メールの最後の六文字に心が躍ってしまった。
あの事件のせいで大切な友人と大好きだった居場所を同時に失った。
いや、忘れようと、逃げるように地元から出て行った。
あのまま、地元に残ったらきっといつまでも前に進めない。
当時のクラスメートは、あの事件の本当の真実を知らない。
だから、あいつが転校したあと、すべての責任を自分に押し付けてきた。
まぁ、事件のせいで他の友達とも溝ができていたから、もうどうでもよかった。
卒業するれば、赤の他人。そしたら、あいつらも俺の事なんかすぐに忘れる。
でも、僕は、今も忘れることができていない。
だから、向日葵公園で昔撮った向日葵の写真だけは、どうしても消去することができなかった。
でも、写真を彼女は、きれいって言ってくれた。
彼女におすすめの本を紹介してもらっている最中に、あやまって携帯を床に落としてしまった。
それを拾ってくれた彼女は、純粋な目をしていた。
そんな彼女を見て僕は、彼女から携帯を受け取ると、彼女に唯一消すことができなかった向日葵を見せた。
すると、彼女は、「きれい」と目を輝かせた。
その目に嘘は感じなかった。
純粋に彼女は、僕が消そうとしていた思い出を否定じゃなく肯定してくれた。
そんな彼女に、僕はいつの間にか友達以上の感情を抱くようなった。
_好き_
あの事件以降、自分から人付き合いをしなくなった。それどころか、本当の自分を見せなくなった。
だから、彼女にも本当の自分を見せるつもりはまるっきりなかった。
けれど、彼女と関わるようになって、純粋な彼女の本当の友達になりたい。叶うなら……
☆
TO 春村 瑞穂
題名 明日
また明日。僕も楽しみにしてます。
あ~ぁ。これだと変だね。
僕から誘ったのに……
ヴヴヴヴヴヴヴヴヴヴヴヴ
from 蜩朧
題名 明日
朧君、変じゃないよ。
私も、朧君が誘ってくれて嬉しかったよ。
だから、変じゃないよ。
じゃぁ、また明日ね。
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