第37話

九月二十六日 二隻駅構内 

 午前九時 瑞穂との集合時間一時間前。

 朧は、事前に頼んだいたある物を受け取る為に駅構内にある店に来ていた。

「おはようございます」

「朧くん。おはよう」

「こんな朝早くにすみません」

「彼女とデートなんでしょ」

「なななんあななな何言ってるんですか?」

「違うの? てっきり彼女へのプレゼントっとばかり」

「違います。彼女は、同じ学校のクラスメートです」

「クラスメート? 本当に? だって、朧くん、これを頼みにきた時…」

 野口は、その日の事を思い出して一人笑いを始める。

「野口さん!?」

「えっ! だって、君が誰かの為に物を頼むなんて初めてじゃん」

「野口さん!」

「ごめん。ごめん。はい、これ、頼まれた物」

「ありがとございます」

「可愛い、ブレスレットだよね。本当、女の子が好きそうな感じの」

「野口さん!」

「ごめん。ごめん。朧くんにだって秘密の一つや二つぐらいあるよねぇ。だって、年頃の男の子だしねぇ」

「……ブレスレット代です」

「確かに受け取りました。領収書いる?」

「自分用ではなくプレゼント用なのでいりません」

「そう。じゃあ、レシートだけ渡しておくねぇ」

「ありがとうございます。野口さん。彼女との待ち合わせがありますので、これ失礼します」

「朧くん待って!」

「野口さん?」

「一つだけ訊いてもいい?」

「なんですか?」

「朧くんが、ブレスレットの裏側に刻んで欲しいってお願いした数字の13と7ってなにか意味があるの?」

「暗号です。彼女、推理小説が好きなんです」

「ふ~ん。ただクラスメートなのに好きな物まで普通知ってる?」

「彼女とは席が隣同士なんです!」

「ふ~ん。そう言えば、朧くんも好きだもんねぇ? 推理小説。え~と、確かホドギスのサクラシリーズだっけ?」

「もう自分の事も、彼女も事もいいじゃないですか? 俺と彼女は、ただのクラスメートです」

「わかった。わかった。 いまは、そう言う事にしとくよ」

「野口さん!」

「朧くん。彼女によろしく。あ~ぁ。じゃあなかったいい報告待ってるよ」

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