第28話

「……」

 限られた人物(野口一・黒鳥恭輔・有栖慶)しか話していない自分の過去を自分の許可なく零に話されていたことに、朧は少なからずショックを受ける。

 しかし、それ以上に自分の味方だと思っていた零に、復讐なんて馬鹿馬鹿しいことはやめろとは言われたことに思いのほか、ショックが大きい。

 自分と零は、どこか似ていると思っていた。

 だからこそ、2年前、彼ら(ゼロも含む)手を取った。

 それなのに……

「……まぁ? 正直、お前が死のうと生きようが俺には関係。この世界に足を踏み入れた時点で全て自己責任。例え、それで命を落とそうとも」

「……」

 彼の言う通りこの世界は、全て自己責任。

 でも……

「まぁ……高校生の彼女相手に刻印入りの婚約指輪を贈るくらいだから、復讐も成し遂げられるかもなぁ?」

『ちょっと待って! なんで零が、俺の高校……』

 と言い切る前に、朧は、零のある特技を思い出す。

 一夜零(裏)は、仕事のをする時、その依頼人、捜し人についての情報、関係者のデータまで完ぺきに揃える。

 どうやって揃えているのかは、相棒である自分にも教えてくれない。

 そして、零が集めてくるデータは、いつも正確で一ミリの間違えも存在しない。

 だから、会社にいる一部の先輩は、皮肉を込めて零の事を「動く辞書」と呼ぶ人もいる。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る