第23話

_バン_

 翔吾と朧の耳に嫌な音が聴こえてきた。

_バンバン_

 もう一度、今度は、はっきり銃声だと分かった。

「零!」

 朧は、相棒である零の名前を大きな声で叫ぶ。

 写真と黒いバラを受け取った零の手には、その二つではなく拳銃が握られていた。そして、二人に狙いを定めていた。

「朧、確かに俺達は、依頼人に怪我を負わせてはいけない。でも、一夜零の裏の秘密がばれた時、俺達は、依頼にであろうとも殺さないといけない。それが、Black Bird に所属する者たちの決定事項」

「……」

 翔吾は、その場にしゃがみ込む。

(殺される)

 一方、朧は、拳銃をおろすように説得を始めた。

「零。とりあえず拳銃をしまえ。こんな事してる暇ないだろ」

「框様」

「びっく!」

 いきなり、零に名前を呼ばれ、びくびくしながら顔を上げる。応答しないと殺されると思ったから。

「こいつの秘密知りたくありませんか? 例えば、なんでBlack Bird に所属しているのか?」

「零、やめろ」

 拳銃をおろすように説得していた朧がいきなり、震え出した。

「朧さん?」

 その震えように翔吾は、驚きが隠さない。

「これで判っただろ。お前の前に居るのがいま、どっちの一夜零か」

「……俺が悪かった」

 朧が零に頭を下げ、二人は和解。

 その様子を息を飲みながら見つめていた翔吾に零が笑顔で話し掛け、最初に拳銃で撃った事を謝罪してくれた。自分でもわからないけど、怖い目にあったのに怒るどころか、この二人を信じたいと思った。

「框様。お見苦しい所をお見せしてすみませんでした。先ほど、わたくしが話した事は、すべて真実です。なので外部に漏らした時は……まぁ、それは一旦置いてこの写真の事なんですけど」

「零、俺にも見せて」

 朧が横から写真を覗き込んできた。けど、すぐ興味が無くなったのか離れていた。

「あの? 零さん?」 

「框様、あいつの事は気にしなくて大丈夫です。むしろ、ほっといても構いません。それより、ちょっとよろしいでしょうか?」

「…どうしたんですか?」

 写真を見た朧の反応も確かに気になる。

けど、零の言う通りあいつ(天童穂積)が現れるまでもう時間がない。

「あの写真は、いつで撮影したんですか?」

「零さんに渡した写真ですか? あれは天童穂積とまだ親友だった中学時代に学校近くの公園で撮影したものです。で、あれを撮影してくれたのは、僕の中学校からの友人なんです。そして、その彼から一週間前に、メールが届いたんです。それも写真付きで」

「メール?」

「あの? メール見ますか?」

「お願いします」

 バックから自分のスマートフォンを取り出し、例のメールを開き零に見せる。

「これです」

「携帯いいですか?」

「どうぞ」

 翔吾から携帯を受け取る。

 ☆

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