第22話
「あの? 朧さん。ターゲットとは、関係ないんですけど…話す前に一ついいですか?」
「どうかなさいました?」
早く話せと急かす零をなだめて、翔吾の質問に耳を傾ける。
「イルカショーが終わりに差し掛かった時、自分のインカムに一夜零の裏の秘密を知った一般人が殺されずに生かされて…そして、その人物を社長が血眼になって捜してるとか冗談ですよねぇ」
祈るように朧の顔を見つめる。
「ねぇ? 俺たちが普通の探偵じゃないって判ってる?」
「!?」
翔吾の頬に向かって黒いバラが飛んで来た。そのバラが少し頬を掠った。
「…人には誰しも触れて欲しくない領域があるんです」
「……」
翔吾が朧の方を見ると彼も零と同様にこの事には触れて欲しくないのか、さっきまでの優しい雰囲気はまるで残っていない。
その様子を見て、翔吾はインカムに聴こえてきた内容が冗談ではないと直感で判断した。けど、二人の前でこの話はするべきではなかった。
この雰囲気を変える為に朧に拾って貰ったバックから一枚の写真を取り出し、黒いバラと一緒に零と渡す。
「あの? これどうぞ」
「あぁ。ありがどう」
怯える翔吾から写真と黒バラを受け取る。受け取るとスーツの内ポケット右手を入れ、絆創膏を取り出し翔吾に渡す。
「ありがとうございます」
無表情だが、怖い雰囲気は感じなかった。
「框様」
朧が翔吾の肩を優しく叩く。
「零は、あぁ見えて本当は優しくていい奴なんです」
そう言って相棒を見つめる朧の顔は、さっきまでとは、打って変わって優しい目をしていた。
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