第19話
_タッタッタッタタタッタ_
「やっと見つけた。なんでいきなり出て行くんだよ」
周りに人が居たためか、演技で零に話しかける。
「ごめんなさい。友達から電話がかかってきたの。あそこで出たらきっと朧さんに怒られると思って。だって、あんな事するんだもん」
謝りながらも、少し恥ずかしそうな演技で言葉を返す。
あくまで、これは、表の返事。
すぐに、朧のインカムに裏の返事を返そうと言葉を発しようとしたら、左手を掴まれた。
「朧さん?」
驚く、零を無視して、走りだした。
しばらく走り、出口が見えてきた頃、朧がインカムに話しかけてきた。
『友達って、音風幸也か?』
朧には、自分の秘密がばれた事、その人物を自分に協力者にしたとは、報告したが、名前はいっていない。
『……』
俺が、返事を返さないでいると、冷たい声で
『零。今すぐ、そいつと手を切れ。そうじゃないとそいつ殺されるぞ』
殺人を予告してきた。
『朧!?』
思わず朧の目をまっすぐ見つめる。
『ばれたんだよ。一夜零の裏の秘密を知った一般人が殺されずに生かされてるって。そして、その人物を社長が血眼になって捜してる。社長が本気になったら、お前の唯一の親友だろうと消される』
Brack Biad 社長 黒鳥恭輔は、普段は優しいが一度、怒らせると誰も手を付けられない。そんな社長が本気を出したら幸也なんてすぐ見つかってしまう。
『だから、大切を親友をなくしたくないなら今すぐ、音風幸也と手をを切れ。もしくは、零、お前が殺せ』
『俺が幸也を』
『そうだ。本来、最初に殺すべきだったんだ。けど、お前はそれが出来なかった』
『…』
朧の言う通りだ。その時点で俺は、完全な裏の人間になれていない。
『まぁ、お前は優しいから』
次の瞬間、ポンポンと頭を軽く叩き、優しく撫でる。
『……朧?』
相棒の素の行動に思わず零自身も思わず身を預ける、
『そいつの事が大事なんだなぁ。でも、今回は、相手が悪い』
手を頭から離し、再び零に視線を戻し、ポケットから一枚の写真と小さなメモを取り出す。
写真勿論、框翔吾から貰った写真ではない。
『少し茶色みがかった黒髪で、身長は、お前より十センチ高い百七十センチ。家族構成は、両親と二歳上の兄と四歳下の双子の妹と弟。性格は、真面目で誰とでもすぐ仲良くなれる。お前とは、中学時代からの親友でクラスも三年間一緒』
朧から渡された写真には、幸也が自分と朝登校する様子が写っていた。
『お前、どうやってこの写真撮ってたんだよ』
『お前が、俺に一夜零の裏の秘密がバレて、その本人を自分の協力者にしたと報告してきた翌日、お前を一日尾行した』
『尾行』
『あぁ』
『この事が社長に知られば、その協力者は確実に消される。それどころか、お前まで消される。俺は、お前を失いたくない。零。お前は、一人しかいない俺の相棒なんだ』
朧の切実な思いに胸が痛い。
音風幸也は、一夜零にとって失いたくない大切な親友。それと、同じぐらい蜩朧も裏の一夜零にとって大事な相棒。
『だから、俺は、社長にバレないようにお前の秘密を知った人間を調べ、音風幸也にたどり着いた。でも、まさか、その人物が零、お前の親友とは思わなかった』
どこからバレたか知らないが、いま社長が血眼なって音風幸也を捜している。
零が写真を見ながら黙っていると、朧が渡した写真を手に取り、その場でメモと一緒に粉々に破り捨てた。
『どうするかは零、お前が決めろ。でも、これだけは、言っとく。俺は、お前の味方だから。ほら、車に戻るぞ』
いつの間にか周りに人が居たので演技に切り替え、零に左手を差し出す。
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