相棒

第20話

車に戻った零は、幸也に戻ったら大事な話があるとメールを送り、もし、返信がきても出られないように電源を切ったと同時に、扉の外からドアを叩く音が聴こえてきた。

「零」

「あぁ」

 零が、ドアに手を掛けようとしたら、朧が急に待ったを掛けた。

「なに?」

「忘れ物」

 変装を解き、ダークブラックのスーツ姿に戻った二人。朧は、零のジャケットのポケットから紺色の眼鏡を取り出す。

 表の一夜零は、視力はいいのでこの眼鏡は、もちろん正体を隠すための伊達眼鏡。

「わりぃ」

 受け取った眼鏡をかけ、ドアを開ける。

「框様。どうぞお入り下さい」

「……」

 蜩朧から渡されたメモを頼りにナンバ-プレートを探し出し、零と朧が乗る車を見つけ出した翔吾。

 しかし、翔吾を招き入れた二人の姿、特に一夜零の姿を見て一瞬、探偵なのに犯罪者に見えてしまった。

 いま、翔吾の目の前に居る零と朧の恰好は、ダークブラックのスーツに白いシャツ。白いシャツには、赤いネッタイ。足元には、スーツと色を合わせたダークブラックの靴。そして、一夜零は、紺色の眼鏡までかけている。

「イルカショーはいかかでしたか?」

 急に話し掛けられたので反応が少し遅れてしました。

「…あぁ楽しかったです」

「それは、よかったです。では、框様。改めてターゲットの事を教えて貰ってよろしいですか?」

「あぁ…はい」

 朧が翔吾に天童穂積の事を改めて訊ねる。そして、零が木の箱に座るよう勧める。

 言われた通り、木の箱に腰をおろす。

 そこで初めて、自分が招き入れた後部座席に違和感に気づく。座席がない以外に普通の車には絶対乗っていない物が数多く乗っている。

 最初に目に飛び込んできたのは、さっきまで一夜零が着ていた服。そして、その隣に置かれてた衣装ケースが二つ。次に翔吾の目に飛び込んできたのは、まさかの刀と拳銃だった。

(これ、本物じゃないよねぇ? きっとおもちゃだよ。うん、きっとそう)

 見なかった事にして、バックを探ろうをしたら零が自分に声を掛けてきた。

「框様? どうかなさいましたか?」

「なんでもありません」

「そうですか? だったらいいんですが、そこに立てかけてある刀と拳銃には、絶対手を振れないで下さい。二つとも本物ですから」

「……」

 零の口から「本物」と聴こえたえた瞬間翔吾の手からバックが床に落ちる。

「大丈夫ですか?」

 落ちたバックを朧が拾い翔吾に渡す。

「……ありがとうございます」

「突然、こんな事言われたら驚きますよぇ。確かに零の言う通り刀と拳銃は、本物です。でも、安心してください。刀は、鞘を抜かなければ使えません。拳銃は、本物ですか、実弾は使用しません。私達は、あくまで捜し物専門の探偵ですから。あと、この車は、会話が外に漏れないように防音。そして、窓から中の様子が見えないように前後の窓以外全て、マジックミラーになっております」

 確かにこの車の後部座席の窓から中が見えなかった。

 でも、翔吾にはこれと同じくらい二人に訊きたいことがある。

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