第13話

『朧、あいつだ。真正面の席に座ってる黒いスーツの男』

 イルカを見るようにスーツの男を指差す。朧も彼の視線を追うようにその男を目に焼き付ける。

『本当にあいつなのか?』

『あぁ。右耳に、目印の黒い鳥のイヤリングが見える。そして、社長室に同じ物があった』

 写真を撮る仕草で、朧に証拠の画像を見せる。そこには、確かに真正面にいるスーツの男が耳に着けている黒い鳥のイヤリングが写っていた。

『お前、こんな写真いつ撮ったんだよ』

『報告書を渡しに行ったとき』

『はぁ? お前勝手に撮ったのか?』

『馬鹿か。ちゃんと写真見ろ』

 零に言われ写真をもう一度よく見て見ると、隣に小さく社長の姿が写りこんでいた。

『社長! でもなんで?』

『写真を撮りたければ、俺も一緒にって言われたんだよ。その時は、ただ、そのイヤリングがかっこよかったから』

『まぁ、その時のお前のおかげで依頼人が確認できたからいいんじゃねぇ』

 朧の言葉に、零はため息交じりに言葉を履く。

『なんか、社長に躍らせれた気分』

『まさか、考えすぎ。それよりこれから、どうする二人で行く? それとも?』

 確認するように零を見つめる。

『…朧。お前、やっぱり馬鹿してる?』

『確認しただけだよ。馬鹿になんてしてないよ』

『そういう所がしてんだよ。お前は、いつも通り俺が行ってる間に』

『分かってる』

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