第13話
「……あぁ、それなら大丈夫。零の元相棒だった蜩さんに、智樹も一緒に行くこと伝えてあるから。それに、今日事務所で、新人さんの歓迎会があるんだって
「歓迎会?」
「そう? だから、よかったら参加しないって誘われたんだ?」
「いやいや? 恭弥! それは行ったらダメだろう? 勿論断ったんだよなぁ?」
なにもない時に、世間話として、零の相棒だった人と零の話しをするのはいいと思う。
だとしても、今日はダメだろう?
「……」
「……恭弥?」
「……ごめん。断れなかった」
「はぁ? お前! そこは、はっきり断れよ!」
「……ごめん。何度も何度も行けませんって断ったんだけど、その度に、蜩さんに大丈夫だよ押し切られて」
零から、蜩さんの性格が、真面目だと事前に教えて貰っていた恭弥。
だから、今日、自分に電話してきた蜩さんは、自分のことをどこかおちょくる、そう? まるで常に自分のことをおちょくるっていた零の裏人格の「ゼロさん」みたいだった。
「……はぁ。恭弥って本当可愛いよねぇ? 色んな意味で。まぁ? そんなお前だ……」
「途中でやめるなぁ! ってか? かわいいってなんだよ!」
「えっ? そのまま意味だけど? ってか? そんなことより?」
智樹は、話題を変える様に、恭弥の右手の薬指に光るシルバーの指輪を指差す。
智樹が知る限り、恭弥は、アクセサリーとかに興味がなかったはず。
それなのに、そんな恭弥の右手の薬指に何故か指輪が嵌まっている。
智樹から良く見えないが、若干指輪の一部が赤く汚れている。
※智樹は知らないが、赤く汚れている部分は、零の血)
「あぁ……コレ? 誰からだと思う?」
恭弥は、指輪を智樹に見せながら、誰から貰ったと逆に智樹に問いかける。
「はぁ? 普通に彼女から貰ったんだろう? お前、彼女いるって言ってだろう?」
「ふふっ」
智樹の答えに、何故か笑い出す恭弥。
「なんだよ! 気持ちワル!」
「ワルイワリィ。ってか? 俺、お前に、彼女とかそんなこと言ったことねぇけど。それに俺? いままで誰ともつきあったことねぇけど」
「えっ? マジで? じゃあ? その指輪……」
いったい誰から?
智樹は、疑惑の目を恭弥に向ける。
「零から貰ったんだよ! 今年の誕生日にプレゼントに」
「えっ? えぇええええええええええええええええええええ」
恭弥からの突然のカミングアウトに、驚く智樹。
「えっ? そんなに驚くことかよ? あいつだって、誕生日プレゼントぐらい渡すだろう? ってか? お前だって貰った事あるだろう? 零から誕生日プレゼント」
「そりゃあ? 貰ったことはあるけど。けど……」
自分が、昔、零から貰ったのは、当時好きだったアニメ(なんのアニメだったかは覚えてないけど)の主人公の……多分ぬいぐるみ。
けど、恭弥が、零から貰ったのは、そんな可愛いものではなく指輪。
それも明らかに、雑貨屋で売っているようなアクセサリーの指輪じゃあなくて、ちゃんとした所で作って貰った本格的な指輪だよなぁ?
(んんんんんん。本人がもうこの世にいないから、直接真意を確かめることはできないけど、まさかあいつ、恭弥のこと……)
智樹は、2年前に、この世を去った幼馴染の果たすことのできなかった、叶わなかった想いを独り胸の中で想像しながら、恭弥の右手の薬指に光る指輪を見つめる。
「なぁ? 恭弥は今まで……いやぁ? なんでもない。そうだなぁ? あいつだって、お前に、指輪の一つぐらいプレゼントするか? なんせ! 恭弥は、彼女がいる俺と違って童貞ちゃんだしなぁ!」
「なんだと!」
恭弥から、右手の薬指から指輪を奪い取るとそのまま逃げるように駆け出していく智樹。
そんな智樹を端走って追い掛ける恭弥。
(零! 安心しろ! 恭弥の一番は、今までもこれからもお前だけ!)
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