手紙

拝啓 音風幸也様。

 幸也? お前がこの手紙……いやぁ? この遺言書を読んでいるってことは、俺は、もう、この世にいないか? もしくは、それに近い状態? それとも、刑務所?

 まぁ? そのどれかだとしても、幸也? お前の傍には居られないなぁ?

 だって、どんな理由であれ、俺は、所長を……人の命を奪おうとした。

 自分の大切な人を護る為に。

 幸也。俺は、犯罪者だ。

 それも、ただの犯罪者でない。

 今日と言う日を生きる為に、俺は、人が踏み外してはいけない道を踏み外し、裏社会に足を踏み入れた。

 そして、今日まで数々の悪事に手を染めてきた。

 今日と言う日を生きる為に。

 明日を笑顔で迎える為に。

 自分の足で、生きていく為に。

 自分には、帰る家も自分のことを待っていてくれる家族もいない。

 そんな自分にとって、あの場所は居場所であり、家族だった。 

 だからこそ、許せなかった。

 所長……いやぁ? 黒鳥恭輔が、幸也? お前のことを殺そうとしたことが。

 幸也。

 13歳の時、俺は、唯一の肉親だった祖母を失くし、住んでいた家(実家)まで失った。

 そして、2週間程度のホームレス生活を経験後、鈴蘭学園中等に編入し、幸也お前と出会った。

 まぁ? 出会ったっていうか、偶々編入したクラスに幸也、お前がいただけで、けど、いまだから言うけど、編入したクラスに幸也、お前がいてくれてよかった。

 あと、最初に自分と友達になってくれた幸也。お前で良かった。

 だからこそ……

 幸也? お前はいま、幸せか?

 俺は……まぁまぁ、幸せだったよ・

 幸也? お前みたいな奴と友達……いやぁ? 親友になれて。

 幸也?

 俺が、もし、お前の前から居なく……まぁ? こんな手紙、いやぁ? 遺言書? みたいなものを書いている時点で、もう居なくなること確定なんだろうけど。

 あぁははぁ、最初に書いていることと、最後に書いていることが、180度まるで違うなぁ。

 でも、多分……いやぁ? 間違いなく俺はもうこの世にいなくなっていると思う。

だから、ゴメン。唐揚げ定食? それも大盛奢ってやれなくて。

 ☆

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