第7話

拝啓 音風幸也様。

 幸也? お前がこの手紙……いやぁ? この遺言書を読んでいるってことは、俺は、もう、この世にいないか? もしくは、それに近い状態? それとも、刑務所?

 まぁ? そのどれかだとしても、幸也? お前の傍には居られないなぁ?

 だって、どんな理由であれ、俺は、所長を……人の命を奪おうとした。

 自分の大切な人を護る為に。

 幸也。俺は、犯罪者だ。

 それも、ただの犯罪者でない。

 今日と言う日を生きる為に、俺は、人が踏み外してはいけない道を踏み外し、裏社会に足を踏み入れた。

 そして、今日まで数々の悪事に手を染めてきた。

 今日と言う日を生きる為に。

 明日を笑顔で迎える為に。

 自分の足で、生きていく為に。

 自分には、帰る家も自分のことを待っていてくれる家族もいない。

 そんな自分にとって、あの場所は居場所であり、家族だった。 

 だからこそ、許せなかった。

 所長……いやぁ? 黒鳥恭輔が、幸也? お前のことを殺そうとしたことが。

 幸也。

 13歳の時、俺は、唯一の肉親だった祖母を失くし、住んでいた家(実家)まで失った。

 そして、2週間程度のホームレス生活を経験後、鈴蘭学園中等に編入し、幸也お前と出会った。

 まぁ? 出会ったっていうか、偶々編入したクラスに幸也、お前がいただけで、けど、いまだから言うけど、編入したクラスに幸也、お前がいてくれてよかった。

 あと、最初に自分と友達になってくれた幸也。お前で良かった。

 だからこそ……

 幸也? お前はいま、幸せか?

 俺は……まぁまぁ、幸せだったよ・

 幸也? お前みたいな奴と友達……いやぁ? 親友になれて。

 幸也?

 俺が、もし、お前の前から居なく……まぁ? こんな手紙、いやぁ? 遺言書? みたいなものを書いている時点で、もう居なくなること確定なんだろうけど。

 あぁははぁ、最初に書いていることと、最後に書いていることが、180度まるで違うなぁ。

 でも、多分……いやぁ? 間違いなく俺はもうこの世にいなくなっていると思う。

だから、ゴメン。唐揚げ定食? それも大盛奢ってやれなくて。

 ☆

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