手紙
(良かったなぁ? お前のことを一番の親友って言ってくれる親友ができて?)
「……恭弥さん?」
再び、黙り込んでしまった恭弥に、幸也は不安そうに恭弥の名前を呼ぶ。
「……あぁ! そう言えば、幸也くんって、教師を目指してるだっけ?」
「はい! 子どもからの夢で」
幸也の夢は、小学校の先生だ。
その為に、今、勉強を頑張っている。
けど……このまま、本当に、教師になっていいのか、この頃、解らなくなってきた。
その訳は、多分……
「……僕もねぇ? 小さい頃から、ずっと医者になりたくて、その夢を叶える為に、毎日、勉強、勉強、勉強。だけど、そんな俺に、零が言ってたんだ! 俺さぁ? 今日と言う日を生きられば、あとは何も要らないって」
「どういう意味ですか?」
「さぁ? けど幸也くんも知ってるだろう? あいつの物欲のなさ?」
「……はい」
確かに、恭弥さんの言う通り、零には物欲がない。
その証拠に、鈴蘭学園時代零が住んでいた寮の部屋には、殆んど物がなかった。
そのおかげで、2年前、零が突然が姿を消したあと、学園長から連絡を受け、零の身元保証人である雨宮煉さんの代わりに、学園に零の私物を受け取りにきた恭弥さんも、段ボールひと箱分の荷物しか持って帰らなかった。
それぐらい零には物欲がないのだ。
いやぁ? それ以前に零は、自分以外の他人に興味がないのだ。
だからこそ、そんな零と友達、いやぁ? 親友になれたのは奇跡に近いかもしれない。
「けど、あいつは、そんなこと全く気にしてなかったし、むしろ、物欲より食欲だったし。あぁごめん! 最初の話しから凄く逸れちゃったねぇ? 今日、きみを呼んだのは、コレを渡す為なんだ」
恭弥は、内ポケットから一通の手紙を取り出し、幸也に渡す。
「恭弥さん? これは?」
恭弥から渡された手紙を見ながら、幸也が尋ねてくる。
「零から幸也くん、きみに宛てた手紙」
「えっ?」
「幸也くん! 本当は、もっと早く……うんん。すぐにでも、きみに渡すべきだった。ゴメンねぇ?」
そう、幸也にに告げると、恭弥はその場から居なくなった。
一人残された幸也は、手紙の封を開けた。
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