金『子守り』

——荒野にて。


 そこは、藍本オリジナルの地球。


 ある裸ん坊の赤子が、かごの中で、一人泣いていた。


 赤子は、男児だった。


 そばには、豆粒ほどに小さな、乳白色の立方体が転がっていた。

 

 煉瓦的微小立方体ナノキューブリックだ。


 煉瓦的微小立方体ナノキューブリックは、男児の泣き声に共振きょうしんするかのように、ブルブルと震え出した。


 そしてそれは、となり、風が吹き、霧のように立ち消えた。


 男児は泣きまず、次第に声は大きくなるばかり。


 程なくして……


 雨。


 白濁はくだくした雨が、男児の上だけに、柔らかに降り注いだ。


 男児は、それをたいそう美味そうに、夢中になって、飲んだ。

 

 そして、ケタケタと笑った。


 白濁した雨は、男児の全身を濡らしたが、暖かな風が吹き、すぐに乾いた。


 満足した男児は、今度は糞尿を垂れた。


 すると再び、男児の上だけに、雨が降り注ぎ、汚れを洗い流した。


 その雨は、さっきのように白濁してはおらず、透明で、人肌ほどの温もりがあった。


 男児は、口周りについた雨を、ペロリと舐めてみる。


 目をまん丸くして、驚きの表情。


 透明な雨は、少し、しょっぱいようだった。


 地に広がった、有機物混じりの汚水は、瞬く間に、大地の小さきものたちの働きで、綺麗さっぱり取り除かれた。


 男児の瞬きの回数が、増える。


 眠たそうだ。


 今度は、どこからともなく、どこかの男女の一組の他愛もない会話と、子守唄が聞こえてきた。


 男児は、それらの音をひどく気に入ったようで、ぐっすりと、眠りに落ちた。


 その後も男児は、大人の手を借りずして、すくすくと育った。


〈土『子供の国』に続く〉

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