第22話

「じゃあ? 明日の11時に、XXからXXに電話を掛けて、それから、また、俺が○○に化け……朧くん?」

 朧の存在に気付いた斗真が、野口との会話を切り上げ、朧に声を掛けてきた。

「あああぁの?」

 斗真の問いかけに、野口に零の伝言を伝えにきたはずの朧は、何故か言葉を出ない。

 目の前にいるのは、2ヶ月まで一緒に仕事をしていた仕事仲間。

 そのはずなんだか、なんだか今の朧にとっては、別の世界の人間に見えてしまった。

「朧くん?」

 中々、自分達に話しかけない朧に、野口が改めて話しかける。

「あぁすみません。あの? 野口さん。零から伝言です」

「零くんから?」

「あぁはい! なんか急用ができたので先に帰ると? だから、そのことを野口さんに伝えて欲しいと? あの? 零って、今、ここではどんな仕事してるんですか?」

 零は、自分に具体的にどんな仕事をしてるのか教えてくれない。

 それどころか自分が、零に仕事の話しをすると……

『お前はもうこっちの世界には関わるなぁ!』

 と冷たく突き離せれる。

 だから、今日、零からここに誘われた時、少し期待をしてしまった。

 今日こそは、きっと話してくれるのではなかったと。

 けど……

「……朧くん?」

 急に零の仕事を訊いてきた朧に、野口と斗真は、お互いの顔を不思議そうにお互いの見る。

「あぁすみません! いまのは、忘れて下さい! じゃあ? 俺、恭弥君達にもこの伝言を伝えないといけないので」

「ちょっと待って朧くん!」

 野口に申し訳なさそうに頭を下げ、そのまま逃げるように二人の元から離れて行こうとする朧を慌てて引き留める。

「離してください!」

 自分の右腕を掴んできた野口を手を振り払う。 

「!」

 振り払われた衝撃で、野口はその場に倒れ込む。

「大丈夫か!」

 斗真が倒れた野口に手を差し出し、そして、野口を投げ飛ばした朧の肩を掴む。

「!」

 朧は、泣いていたのだ。

「蜩……お前?」

 そんな朧の姿に、斗真は掴んだ手をゆっくり離す。

 そして、そのまま一方後ろに下がる。

「野口さん。僕は、2年前、恋人だった春村瑞穂を五条龍也に殺されました。そして、そんなはあいつに復讐するただそれだけの為に、何もかも捨ててこの世界に足を踏み入れました。けど、実際にあいつを手に掛けたのは、零で、僕自身は、復讐どころかあいつを手に掛けることすらできなかった。それどころか、自分のせいで、零を瑞穂にみたいに永遠に失ってしまう所でした。だから……」

 言葉を一旦切り上げ、涙を拭い、二人の方を振り返る。

「俺には、あの人の代わりはできないみたいです」

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