第18話
事務所受付。
「……どこ行こうとしてんだよ? バーベキューはまだ終わってねぇぞ!」
智樹に永遠の別れ(決別)を告げ、彼を仮眠室に一人残し、誰にも告げず「white」から出て行こうとしていた零に、誰かがうしろから声を掛ける。
「……終わったんだよ。俺にとってはなにもかも」
その声に出口に向かっていた零は、足を止めずに返事だけ返す。
そして、そのまま出口に向かって歩を進める。
「ふざけるな!」
恭弥は、零の元まで走っていくと、そのまま、彼の左頬を拳で殴りつけた。
その衝撃で、地面に倒れ込む零。
「なにするんだよ!」
恭弥に殴られた左頬を押さえながら、ゆっくり立ち上がる零。
※いつもなら、零の裏人格である「ゼロ」が、表に出てくるはずだか、今の所は出てくる様子はない。
「お前が……また、俺たちに勝手に黙っていなくなろうとしたからだよ!」
「はぁ? 俺がいつ居なくなろうとした! 俺はただ、自分の家に帰ろうとしただけだろ! それをお前が勝手に勘違いしたんだろう!」
確かに、零は、終わったとは言ったが、居なくなるとは言ってない。
でも……
「あぁ! 確かに、お前は、いなくなるとは言ってない! けど、お前は、家に帰るとも言ってない。ただ一言。なにかも終わったって言っただよ! それはつもり、俺たちの前から消えるってことだろう? それになんで智樹が一緒じゃないだよ! 智樹は、お前と一緒にいたはずだろう? なんで一緒じゃないだよ?」
「それは……」
言える訳がない。
智樹に、金輪際自分の前に姿を現すなぁ!
もし姿を現すたら……躊躇いもなく殺すと。
「お前まさか……クソ! 零! 俺が、智樹を連れてここに戻ってくるまで絶対ここから居なくなるよ! いいな!」
すぐさま理由を言えない零に、なにかを察した恭弥は、零に強引にここにいるよう約束させる、ひとり智樹を迎えに事務所内に駆け出して行った。
★
「……ごめん! 恭弥。やっぱりお前も、こんな俺とは一緒にいるべくじゃあないよ? ごめんなぁ? 俺から一緒にいて欲しいってお願いしたのに」
恭弥とお揃いでこっそり自分用にも作っておいたシルバーの指輪(表面に小さく二つの星が刻印してある)を首元に掛けたネックレスごと外すと、誰もいない、受付に置
いた。
そして、朧にインカムで先に帰ると連絡し、その場を事務所をあとにした。
★
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