第18話

事務所受付。

「……どこ行こうとしてんだよ? バーベキューはまだ終わってねぇぞ!」

 智樹に永遠の別れ(決別)を告げ、彼を仮眠室に一人残し、誰にも告げず「white」から出て行こうとしていた零に、誰かがうしろから声を掛ける。

「……終わったんだよ。俺にとってはなにもかも」

 その声に出口に向かっていた零は、足を止めずに返事だけ返す。

 そして、そのまま出口に向かって歩を進める。

「ふざけるな!」 

 恭弥は、零の元まで走っていくと、そのまま、彼の左頬を拳で殴りつけた。

 その衝撃で、地面に倒れ込む零。

「なにするんだよ!」

 恭弥に殴られた左頬を押さえながら、ゆっくり立ち上がる零。

 ※いつもなら、零の裏人格である「ゼロ」が、表に出てくるはずだか、今の所は出てくる様子はない。

「お前が……また、俺たちに勝手に黙っていなくなろうとしたからだよ!」

「はぁ? 俺がいつ居なくなろうとした! 俺はただ、自分の家に帰ろうとしただけだろ! それをお前が勝手に勘違いしたんだろう!」

 確かに、零は、終わったとは言ったが、居なくなるとは言ってない。

 でも……

「あぁ! 確かに、お前は、いなくなるとは言ってない! けど、お前は、家に帰るとも言ってない。ただ一言。なにかも終わったって言っただよ! それはつもり、俺たちの前から消えるってことだろう? それになんで智樹が一緒じゃないだよ! 智樹は、お前と一緒にいたはずだろう? なんで一緒じゃないだよ?」

「それは……」

 言える訳がない。

 智樹に、金輪際自分の前に姿を現すなぁ!

 もし姿を現すたら……躊躇いもなく殺すと。

「お前まさか……クソ! 零! 俺が、智樹を連れてここに戻ってくるまで絶対ここから居なくなるよ! いいな!」

 すぐさま理由を言えない零に、なにかを察した恭弥は、零に強引にここにいるよう約束させる、ひとり智樹を迎えに事務所内に駆け出して行った。

「……ごめん! 恭弥。やっぱりお前も、こんな俺とは一緒にいるべくじゃあないよ? ごめんなぁ? 俺から一緒にいて欲しいってお願いしたのに」

 恭弥とお揃いでこっそり自分用にも作っておいたシルバーの指輪(表面に小さく二つの星が刻印してある)を首元に掛けたネックレスごと外すと、誰もいない、受付に置

 いた。

 そして、朧にインカムで先に帰ると連絡し、その場を事務所をあとにした。

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