第11話

「それにしても、人生なにが起こるか本当分からないねぇ? 朧くん! きみが2ヶ月前、いきなり大学に行きたいから事務所を辞めさせてくださいって、大和先輩にいきなり退職願いを出した時すら驚いたのに、まさか、零と朧くんが恋人同士とはねぇ? 本当! 人生になにがあるか分からないねぇ?」

「あぁぁはぁぁ」

 一ノ瀬遼の言葉に、苦笑いをする朧。

「で? どっちから告白したの? 朧くん? それとも零?」

「えっ?」

 苦笑いから一転、困惑の表情に変わる朧。

「えっ? なんか? 俺、変なこと聞いた?」

 朧の表情に、質問を投げかけた遼が困惑な表情を見せる

「えっと……」

 遼の言葉に、言葉を返せない朧。

 そんな朧に、助け舟が。

「おい! 遼! 朧くんが困っているだろう! ごめんなぁ? こいつ、久しぶりに朧くん。きみに会えて嬉しくって浮かれているんだよ」

 月見坂伊吹が、相棒である遼の頭を軽く叩く。

「なにするんだよ! 伊吹!」

 理由もなく、突然頭を叩かれた遼は、頭を押さえながら伊吹のことを睨みつける。

「お前が変なこと言って、朧くんを困らせるからだろう!」

「俺は、変なことなんか言ってねぇし、ただ、朧くんに質問しただけだし」

 自分の主張を伊吹にぶっける。

 そんな遼の言葉と態度に、伊吹は「はぁ?」とため息をつく。

「あのさ? それが一番迷惑ないんだよ! 今の朧くんにとっては。ってか? 俺たち、いやぁ? 遼? お前には一番言いたくないだろう! うちの事務所で一番口軽いし。なんなら、お前すぐ顔に出るし。そうじゃあなくても、他人に言わずに二人だけの秘密にしておきたいだろ……ん?」

 伊吹が、突然会話を切り上げ、後ろを振り返る。

 その視線に、気づいた遼も伊吹の視線を追い掛ける形で後ろを振り返る。

 そして、大きくため息をつきながら、自分の斜め隣にいた城谷純也の肩を掴み、天使の笑顔(※目もとは笑っていない)で、純也にしか聞こえない様に、小さな声で

「……なんで俺が、この事務所で一番口が軽いですか? 貴方のですよね? この事務所で一番口が軽いの?」

「!」

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