② 裏の顔

第8話

捜し物専門探偵事務所「white」 

「あれ? 零くん?」

 智樹と一緒に「white」にやってきた零に、丁度、昼飯の買い物から駒井悠馬が気づき、零の方に掛け寄って来た。

「駒井先輩! お疲れ様です」

 零は、自分の元に掛け寄って来た悠馬に、笑顔で挨拶を返す。

「あれ? 零くん。今日は、昼から半休……」

 悠馬は、零の隣にいる智樹に気づき、会話を切り上げる。

 一方の智樹も、そんな悠馬の視線に気づき、零の服の袖を掴む。

 しかし、零は、そんな智樹の行為を無視して、悠馬に智樹のことを紹介する。

「あぁ! そうだ! 駒井先輩! こいつ! 俺の幼馴染で、針谷智樹って言うんですけど、さっきこいつから、個人的に仕事の依頼を受けたんですけど、やっぱり社長に一度相談した方がいいでしょうか?」

 本当は、仕事の依頼なんか受けていない。

 それどころか、智樹に裏社会で探偵の仕事をしていることすら話していない。

「あぁうんん。うちの会社として、零くんが仕事の依頼を受けたなら、社長に相談した方がいいと思うけど、零くんが個人的に……」

 再び、智樹の方を見る悠馬。

 けど、今度は、すぐさま、零に視線を戻す。

「依頼を受け、尚且つ、そこに多額の報酬が発生しないなら、うちに報告する必要はないよ。でも、だからと言って、会社や社長に黙って、個人的に仕事の依頼を受けるのはダメだよ! 零くん! きみは、あくまでうちの探偵事所の探偵なんだから」

「解りました。けど、あとから面倒に巻き込まれたくないので、今から社長に報告してきます。駒井先輩? 社長? まだ? 会社にいますか?」

「あぁ! ちょっと待ってねぇ? いま、社長に電話してみるから」

 零に、問いかけに悠馬は、スマホを取り出し、電話を掛け始めた。

 すると、電話の相手である社長こと、城谷純也は、すぐに悠馬の電話に出たのか、悠馬は、社長と電話越しに話し始めた。

 そして、2分後、純也との電話を終えた悠馬が、零にその内容を伝える。

「社長が、今から、お昼を食べに行くつもりらしいだけど、よかったら、君たち二人も一緒にどうかなって?」

「あの? 駒井先輩! もう2人呼んでもいいでしょうか? その社長とのランチに」

「えっ?」

 まさかの提案返し、悠馬の方が驚いてしまう。

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