第32話

「愛美は、山下のこと、どう思ってるの?好き?」


「再会したばっかりで、清人がどんな人なのか、まだわからないよ。子供の時とは違うだろうし。

だから『好き』とか、そんな風に考えたことない。」


「キスして、どうだった?」


「なんでそんなこと訊くの?」


「じゃ、さっき俺としたキスはどうだった?教えて。知りたい。」


「……」


「わからなかったんなら、もう一回しようか。」


チュッ。軽く触れるキスから始まって、航平の舌が私の口内に入ってきた。


私をキツく抱き締めながら、深いキスを止めない航平。


息が苦しくなって、唇を離し、プハッと息をしても、また唇を塞がれる。


卑猥な音を立てながら、キスを繰り返す。


いつの間にか、私は航平の服をギュッと握りしめ、航平に求められるまま、キスを受け入れていた。


ハアッハアッ……


唇を離した二人は、夢中で息をする。



「やべぇ。」


航平の上気した顔を見つめると、航平が


「これ、どうしよう」


と、下腹部を指差す。


「そんなこと知りません!」


そっぽを向く私。


「で、どうだった?俺とのキス。」


「言わないといけない?」


「愛美のこと、ちゃんと知りたいから聞きたい。」


「何も考えられないくらい、気持ちよかった。」


「やっべ。すげぇ嬉しい!」


ますます赤くなる航平。


「俺、頑張るから。愛美のこと、もっともっと大事にするから。俺のところに戻ってきてくれるの、待ってる。」




浮気のことは許せないけど、それとは別にして、私もきちんと航平のことを見て、考えてみよう。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る