第31話

「朝になったら、入院に必要なもの、揃えて持ってくる。あっ!航平のご家族に連絡してない!」


「あとでlineしとく。通話しなかったら病室でも大丈夫だろ。」


「うん。」


「こんな時に不謹慎だけど」


「何?」


「愛美がそばにいてくれて、刺されてラッキーなんて思ってる」


「航平!?」


「ごめん、でも。正直な気持ち。」


「私、心配したんだよ?

血がいっぱい出て、死んじゃうんじゃないかって。」


「ごめん。」


親指で私の涙を拭いながら、航平が申し訳なさそうな顔をする。


「ごめん。」


「っ!」


航平が私を抱き締めてきた。


航平の匂いがする。


懐かしさに思わず目をぎゅっと瞑る。


一瞬、航平は私を離し、唇に触れるだけのキスをして来た。


すぐに唇を離し、


「唇にキスできるのは、ホントに好きな人だけだよ。

少なくとも俺はそう。

だから、アイツにはしたことない。

山下は、愛美のこと、本気で好きだと思うよ。」

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