向き合う二人

第30話

点滴が終わる頃、航平が目を覚ました。


点滴のせいか、まだ少し、意識が朦朧としているようだ。


「愛美?」


航平が私に向かって手を伸ばす。


それを両手で握りながら、


「航平、私をかばったせいで、ごめんね。」


涙がぼろぼろ、次から次へと頬を伝う。


「愛美だったら、避けて刃物を取り上げてたかもしれない。でも、咄嗟に体が動いて愛美をかばったんだ。」


「うん。」


「それに、元はと言えば、俺のせいだし。

でも、アイツには悪いことしちゃったな。

俺が振り回したせいで、警察に捕まるようなことさせてしまった。」


「航平のことが、すごく好きなんだろうね。」


「俺はその気持ちを利用した。

アイツのこと、なんとも思ってないのに…アノ時だって、アイツのことなんか抱いてなかった。

いつだって、愛美を思いながら…」


「航平って、結構残酷だね。」


「ははっ、そうかも。」


「私が、思ってること言わなかったからいけないんだね。浮気した航平は勿論悪いけど、そうさせたのは私にも原因がある。」


「愛美が俺のこと許せるまで、いや、許してくれなくてもいい。もう一度、俺と向き合おうと思えるようになるまで待つよ。」


「でも私、清人とキスしたよ?」


「……アイツのこと、好きになった?」


「清人は、昔うちの隣に住んでた男の子だったの。

仲のいい友達だった。


気づいたのは、サークルに入ってきた、あの日だよ。

キスしたのもあの日。

信じてた人に目の前で裏切られて、ショックで…。

私、ちゃんと泣いてなかったんだ。清人が泣かせてくれたの。」

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