第29話
「点滴が終わったら、ナースコールで呼んでください」
「わかりました。」
航平の寝顔はまだ青白い。
寝顔を見つめながら、さっきのシーンを思い出す。
あの女は、私がいなくなれば、航平が自分を見てくれると思ったんだよね。
あの女のしたことは間違ってるけど、私はあんな風に、情熱的に、誰かを想ったことがあるのかな。
前に航平が言ったように、確かに浮気されたくらいで別れを決められるような感情しか、私は航平に持ってなかったのかもしれない。
由利香とランチした日、航平にあんな仕打ちを受けたのに、航平のことを諦めるどころか、私を刺してまで、航平を手に入れようとしたあの女。
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