第21話

「愛美っ」


由利香より先に、航平が入ってきた。


続いて由利香。


「航平くん、彼女、あそこに座ったまま泣いてるけど?」


「いいんだ。もう切ったんだから。」


「今日はアタシ、愛美とランチの予定だったんだけど、まあいいわ。座ったら?」


由利香は私の隣へ、航平は向かいに座った。


オーダーを取りに来たスタッフに


「アタシ、アイスコーヒー。航平くんは?」


「俺も。」



「で?さっきの彼女は、一体何?」


由利香には誰も逆らえない、独特の雰囲気がある。


一瞬躊躇ったようだが、あの日の出来事を航平が一部始終話す。


「航平君は、愛美が好きなのに、愛美を抱いたベッドで、他の女を抱いたと。しかも、何度も、愛美の目を盗んで。間違いない?」


青ざめながら、航平が首を縦に振る。


「愛美みたいな素敵な彼女がいるのに、どうしてそんなことしたの?」


「愛美は俺を必要としてないと思って淋しかった。

心にぽっかり空いた穴を埋めようと思って。」


「で、愛美以外の穴を埋めちゃったのね?」


溜め息をつきながら、スゴいことを言う由利香。


「で、二人はどうしたいの?」


「俺は別れたくない」


「私はもう、航平とは無理。」


「アイツとは別れ話をしたんだ。でも、付きまとってきて。」


「ふんふん。今の航平くんと同じね。愛美は別れ話をしたのに、愛美に付きまとってる。」


何か言いたそうな航平に、由利香は続けて


「別れ話をした方は結論を出してるけど、された方は違う。ちゃんと話し合わないと、このままの状態なんじゃない?」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る