航平と由利香

第20話

次の日は土曜日だった。


由利香とランチをする約束をしていて、待ち合わせのカフェ兼レストランに行く。


由利香は近くの私大に通っているから、会おうと思えば、いつでも会える。


窓際の席に座り、何気なく外を見ていると、航平が道路の向こう側を歩いているのが視界に入ってきた。


その航平の腕に両手で捕まりながら、数歩後ろを、あの時の女が歩いている。


まだ続いてるんじゃん。


航平があんなヤツだったなんて。


喉が乾いていたので頼んでいたアイスティをストローで啜りながら、目をそらす。


すると、スマホに着信が。由利香からだ。


「もしもし、愛美?アタシ、愛美の彼氏ともうすぐすれ違うんだけど。」


道路の向こう側を見ると、航平の5メートル先に由利香がいる!


由利香には会って話そうと思い、航平のことは、まだ話してない。


「『あれ?確か、航平くん?そちらは?』


『あ、由利香さん?えと…』


『…その人のこと、引きずって歩いてるの?しかも、その人、泣きすぎて、顔がすごいことになってるよ。

ツケマ外れてるし、黒い涙が出てるし。』


『放してくれなくて』


『まぁ、いいわ。ごゆっくりね。アタシ、今から超絶美女と約束があるから。』」


通話はそこで切れた。


由利香がこちらへやってくる。


私に気づいた航平が、腕を思い切り振って、女を振り切り、こちらに走ってやってきた。


女は反動で尻餅をつき、その場にしゃがみこんだ。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る