第58話

「陽緋ちゃん、行こうか。」


「どこに行くの?」


と廣田くんと亜美先輩。


「ナイショ!」


隆太先輩はあたしのバッグを片手に持ち、もう一方の手であたしの手を引き、ドアの前まで行く。


「りゅーちゃん!」


廣田くんが大きな声で隆太先輩を呼び止めた。


「なに?」


「上野さんは、俺のだから。」


言うなり、あたしの腰と胸の辺りに腕を回し、あたしはそのまま後方にぐいっと引かれた。


背が着地したのは廣田くんの胸の中。


そのまますっぽりと、廣田くんの腕の中にあたしの身体は収まった。

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