第41話

一番鬱陶しかったのが、アタシが大学4年で、正和が就職1年目の時、アタシに会いに来て、しつこく

「好きって言って!」

って言ってきたことかなぁ。



『鬱陶しい』なんて、アタシ、自分でも酷いと思うけど、たまにスーパーで見かける「買って買って!」と駄々をこねてる子供みたいに『好きって言って!』と言われるのを不愉快に思ったんだよね。



『好き』って思った時には言いたくなるだろうし、『好きって言って』と言われて言うのはなんか違うと思う。


当時は山崎くんとの関係が心地よくて、遠距離で淋しいなんて、思わなかったし。



正和といるのに、山崎くんを思い出しちゃうことに罪悪感を感じて泣いたら、正和、自分に会えなくて淋しかったと思って、『ごめん』って謝ってきて。

それにまた罪悪感を感じて泣いて。



ズルズル付き合わずに、あの時に別れを告げたらよかったのかもしれない。納得してもらえなかったかもしれないけど。


そもそも、好きでもないのに付き合いだしたのがいけなかったのかも。


多分、アタシ、山崎くんが好きだったから、山崎くん以外に「好き」って思わないし言えなかったんだ。

正和のこと『好き』って思ってないから、嘘でも『好き』 と言えなかったんだ。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る