第12話

「キレイだね」

隣に座ってる田原さんが、夜景を見ながらポツリ。


「ね、最初に会ったときのこと、覚えてる?」


「先週、カナさんちで会ったばかりなので、覚えてますよ?」


「違う。もっと前。夏くらい。

僕、その夜、当番で調理場に残ってて。

暇だから、フロントに朝刊もらいにいったら、フロントに一人でいたよね?」


「夏?………、、、

ああ、黒石さんが休憩の時、代わりにフロントに入ってた、あの時!」


「僕はもっと前から知ってたけどね。

調理場に宴会時間上げに来たとき、真っ赤な顔して言ってて、かわいいコだなって思ったんだ。」


「で、あの夜、ちょうどフロントにいるキミを見かけて。いつもなら朝刊なんて、夕刊がきた時点で裏に置かれるの知ってるから、勝手に取るんだけど、キミと話したくて、わざわざ話しかけたんだ。」


そういえば、朝刊、見繕って何部か渡したなあ。

新聞なんて読むんだ、スゴいって思ったっけ。

アタシなんか、4コマ漫画とテレビ欄に、人生案内くらいしか見ないし。

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