誕生日

第70話

今日は、義仁さんの誕生日。


昨日から下拵えをして、ケーキも焼いて、あともう少しでできるって時に、電話が鳴った。


「もしもし。」


『ごめん。家族が熱を出して、病院につれていかなきゃいけなくなって。今日、行けなくなった。』


「…そうですか……お大事に。」


と言うのが精一杯だった。


泣きそうだったから。


切ったばかりのスマホが鳴る。


坂本くんからだ。


「もしもし、坂本くん?」


『安藤さん?渡したいものがあるんだけど、行っていい?となりの隣のマンションに、今、いるんだけど。』


「うん。いいよ。」

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