第32話

「奥さんも、主任の浮気を知らないんですよね。」


「浮気…か。世間的にはそうかもしれないけど、俺には浮気じゃない、本気だよ。

もし、今知られると、安藤さんがこの会社にいられなくなるかもしれない。だから、今はまだ言えない。」


「だったら、安藤さんのことを思うなら…」


「でも、彼女を離したくないんだ。」


「いつかバレる日が来ますよ。傷が深くならないうちに、言った方がいいと思います。」


「安藤さんに、俺が既婚者だってバラす?」


「言いませんよ。聞くなら、主任からの方がいいでしょう。」


時計に目をやった主任が、


「もう、昼休みが終わる。先に戻るよ。」


そう言い、研修室を出ていった。

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