第5話 略奪と再会
俺と向日葵の恋人に近いやり取りは、三日続いていた。そして、今日も陽だまりの様な明るい声は、教室に響き渡り、俺の名を呼ぶ!
「純くーん!おっはようっ!」
向日葵は、いつもの如く、俺の腕を組み陽光みたいな笑顔を向けてくる、俺も慣れたものだ!これが最初なら緊張しまっくっていた事だろう。
「おっす!向日葵!」
「今日は、ご機嫌だねぇ!何かあった?」
「家で煎茶飲んでたらさ茶柱立っててさ今日もいい事あるかもってね」
「煎茶とか渋いね!一日の始めにいい事あるとテンション上がるよね!ん?」
向日葵は、徐に、俺の首元に手を伸ばして来た。
「どした?どした?」
「いいから!じっとしてて!」
そう言うと向日葵は、ネクタイを直してくれたのだ。俺は、照れを隠した。
「何だか…夫婦…みたい…だね…」
それは、なんですかー?逆プロポーズですかー?やばい…あれっ何かおかしい…血?俺は、薄れゆく意識の中音声案内が鳴り響いていた。
「ラヴポイントがゼロになっちゃった…ラヴポイントがゼロになっちゃった…」
「純くん!純くん!」
「ここは?」
掠れている視界が徐々に戻ってくる、周りを見渡すと見慣れない天井清潔感のある一室には、ベッドが二つ、デスク、薬棚がある、それで俺は、気付いた、あっここ保健室だと…それに外はすっかり夕暮れ時だ、俺は、どれだけ寝てたんだよ…と寝返りをうつと椅子でうたた寝をしている向日葵がいた。こんな時間まで付き添ってくれたのか…ああ…愛おしい…
「ふガッんー!」
「あーやっと起きたー!ほんと心配したんだよ!」
「わりぃわりぃ朝の出来事が強烈過ぎてさ笑おかげラヴポイントゼロになっちまったし笑」
その言葉を聞いた瞬間、向日葵は、そそくさと椅子から立ち上り教室を出ようとしていた、それを止める様に俺は、向日葵の手を掴んだ。
「俺も帰るよ!」
「離せよ…」
「えっ?」
「その汚ねぇ手を離せっつってんだよ!この腐れ童貞が!」
「向日葵…何言ってんだよ…なっまた何かのイタズラ何だろ?」
「まだ気付いてないの?頭の中お花畑かよ!ここを何処だと思ってんの?全てがラヴポイントで決まる学園だよ!カモれそうな奴がいたら騙すに決まってんじゃーん!カスポイントも出ねぇ奴には、もう騙す価値もねぇんだよ!」
「あんたは、向日葵に騙されちゃったの!お解り?残念でしたー!キャハッ」
そこには、いつもの天真爛漫な向日葵の姿は、なかった…そこに居たの紛れもない悪魔そのものだった。
「明日から喋り掛けないでねっじゃあねー」
その言葉を言い残し向日葵は、保健室を後にした。そして、ガラガラと保健室の先生が入って来た。
「あっ目覚めたんだ」
俺は、先生の声に反応出来なかった、それどころか視界は、涙で歪み、教室に倒れ込むのが精一杯だった。
「何でだよ!何でなんだよ!俺の事が好きだったんじゃないのかよ!」
「ピコンッラヴポイントがゼロになっちゃった…ピコンッラヴポイントがゼロになっちゃった…」
「うるせぇ!」
「何が思い出いっぱい作ろだよ!何がポイントなんか関係ないだよ!関係大アリじゃねぇか!童貞の純情弄びやがって!」
「痛てぇ…痛てぇ…痛てぇ…恋ってこんなにイテェのかよっ」
コツッコツッと、教師に足音が響き渡る中、彼は、その音に反応し、涙と鼻水でグチャグチャになった顔を教台に向けた。月明かりに照らされた教台には、北条美月姫の姿がそこには、あった、まるで、漆黒の闇を切り裂き、風のように颯爽と人々を救い出す、ダークヒーローが降臨したかのような光景に俺は、不覚にも心奪われていた。夜風に靡いた黒く長い髪を掻き上げまるで醜悪な生き物を見下すが如く、冷ややかな視線を投げ掛ける美月姫。その瞬間、彼女から放たれた第一声は…
「哀れな男ね…」
まさに、鋭い刃の様な罵倒だった…その刃は、彼の傷つき、砕け散った心の奥深くに、またしても
特大の矢が突き刺さったのだった。そして、再び、音声案内が響き渡る。その音声は、死神が囁くかの様に、ラヴポイントの減少を告げていた。
「ピコンッラヴポイントがマイナス1になっちゃった。ピコンッラヴポイントがマイナス1になっちゃった。」
この再会が俺の復讐の足掛かりなるとは、この時の俺は、まだ…知らない…
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