第3話 私立恋愛学園

ありふれた始業式が終わり、騒つく教室の中で俺は、孤立していた…今朝の冷徹美少女の姿は無い、別のクラスになったのだろう、そんな事は、どうでもいい、問題は、孤立している事だ、既に幾つかのグループが誕生している、何でそんなに直ぐ仲良くなれるんだ、これがコミュ力の差ってやつなのか?相手に合わせられる奴、相手を自分のペースに巻き込む奴、人の処世術というのは、大いたいこの二つで構成されているのが伺える、ボス猿に組みする子猿の軍団、という所だろうか、猿山は、社会の縮図そのものかも知れない、と変な考察を考える、だとすると、一人で孤立する俺は、何なんだろうか、一匹だと…狼だろうか、かっこいいから良いけど狼、でも群れ作りたいよ狼、顔だってそう悪くないし(目つき意外)身長だって百七十センチは、超えてる自分言うのもなんだが性格も悪くない…はずだ…まぁ焦るのは、遅くないんじゃないか。だってまだ高校生なんだから、うん、そうに違いない。と自分に言い聞かせる。そして、ガラガラと教室のドアが開いた。調子っ外れた声は、教室を響かせた。

「はぁーい!皆んな席に着いてー!HLはじっめるよー!」

 何処ぞのアイドルが登場して来たかと思った…彼女の身長は、推定百四十センチあるか無いかだと思う、タイトなスーツとのギャップに先生の背伸びが伺える。そして、大きな水色のリボンは、先生の茶色髪を束ねている、見た目だけだと完全に小学生と見間違う外見だ。

「はーい!静かになるまで3秒掛かったぞ〜先生怒っちゃうんだからね!」

 プクッと頬を膨らました、先生に言いたい事がある、ここは、何処の軍隊なのかと。そして女生徒が俺が思っている事を代弁してくれていた。

「先生早すぎーそれじゃ自衛隊だよー!」

「へっ先生3分と間違えちった!ごめんね〜テヘペロ!」

 一発で教室は、笑いの渦を巻き起こしていた。

「はーい!ひと笑い取った所で自己紹介しちゃうよー!」

 そう言うと先生は、黒板に自分の名前を書き始めた。

「小鳥遊小鳥ですっ!皆んなことりちゃんって呼んでねっ!それじゃあ皆んなも自己紹介しちゃおっか!」

 出席番号順に自己紹介が始まった。名前と自分の好きな事を言う一般的なやつだ、まぁ小中合わせて九回も経験してるんだ、楽なもんだ、そして俺の番。

「名前は、はちゅおうじ…」

 噛んでしまったー!高校生活一発目の自己紹介で…不吉だ…

「八王子純太です…好きな事は、えい映画鑑賞です」

「はい!八王子純太くんね!じゃあ次の人!」

 小鳥先生も少し気を遣ってくれた気がする…あぁ…恥ずかしい…悶々としていると自己紹介は、終わっていた。

「ありがとね!みーんな仲良くしよーねー!」

「えっと後は、配布物があるから一番前の人は、取りに来てね!」

 配布物は、各教科の教科書、生徒手帳、学校のパンフレット、そして、平たく細長い箱が俺の机に並んだ。

「皆んな行き渡ったかな?大丈夫見たいだね!じゃあ説明して行くよー!パンフレット開いてー!」

「多分知ってると思うけど一応補足するね!我が高は、由緒正しき伝統ある学校なのです!近年、少子高齢化やソーシャルメディア促進により対面での接触は、少なくなり人口は、激減の一斗を辿っています!そこで我が高は、その名の通り恋愛を推奨する学校なのです!」

 ふへっ?一瞬話が理解できなかった。俺に学校への拘りは、なかった。高校を決める決め手となったのは、登校距離だ。俺の家から歩いて二十分と魅力的な物件だったからだ。もちろん学校なパンフなんて熟読していない、パラ読みだ。

「何てったって我が高の一番の魅力は、舞踏パーティなんです!このパーティは、ですね、毎年全校生徒からニ名、王と姫を選んじゃいます!そして選ばれた人には、なんと、各五千万円を授与致します!いいな!いいな!先生も欲しいなー!」

 ブフッと思わず噴き出してしまっていた。皆が俺を見る目線が痛い。どうやら知らないかったのは、俺だけだったらしい。皆んなの顔から伺えるの当然いった表情をしている。この学園に居る生徒皆んな 敵 なんだ。北条美月姫が言っていた事は、こう言う事だったのか。

「王と姫を決める判断材料が皆んなの目の前にあるコレ!」

 先生は、平たく細長い箱を手に取り開けて見せた。そこには、スマートウォッチが入っていた。

「腕時計型生態観察装置、通称ラヴウォッチが皆んなのキュンキュン度を測定して年に一度の大晦日の日に一番多い点数を持っていた方が王と姫に輝くのです!さぁ皆んなラヴウォッチを付けて見て!」

 皆んなは、スマートウォッチを付け始めた。そして、俺も。緑の閃光が目の奥に入ってくる。

「アカウント作成…八王子純太…認証しました」

 すると、目の前に小人が現れのだ。

「ラヴちゃんは、見えたかな?その子の名前は、ラヴちゃん、皆んなの心拍や脈拍を測定してくれるAIよ!色々サポートしてくれるから仲良くするんだよー!」

「えっとえっと後は、ラヴポイントの説明ね生徒一人一人にG〜Aランクがあって、そのランクに応じて優遇されてくの!例えば学食だったらランクGなら煮干し定食、Aランクなら古今東西舟盛定食とかね!」

 えらいランク差だな、要するに稼げば稼ぐだけ優遇されるって事ね。

「じゃあ皆んな清く正しい学校ライフを送ってね!後エッチな行為は、禁止されていますからね!ラヴちゃんが見てますからね!HL終わりにするね!バイビー!」

 そう言うとそそくさと職員室へ戻って行った。

 ちょいちょい先生、語尾が古いんだよな…これは、本当にまずい事になった…恋愛のれの字も知らないこの俺がこの恋愛学園で生き残って行けるのだろうか…不安だ…

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る