第14話貢ぎ物
教室に着いて思ったことは、すごいの一言。
この教室の机は前世の高校とは違っていて、机が一列づつに繋がっていたのだ。
前世、良くテレビで見た大学の様な感じの机に感心していれば、ニレは手際良く私を真ん中の列に押し込み、隣に座るとカバンからノートを取り出した
早速勉強でもするのだろうかと、隣の彼のノートを覗けば、そこに書いてあったのは魔道具の設計図だった
「……学校でも魔道具のこと考えてんだね」
「殿下からの要望が少し、難易度が高いものですからね、毎日考えていないと期間内に出来上がりませんから」
「…そっか、なんかごめんね」
「いえ、楽しいので平気ですよ」
「そ、う?勉強に支障はない?」
「ええ、特にないですね」
平然と答えながら、ノートに何やら書いて行くニレは、流石天才だと感心した。
あれだけ難しい事を頼んだのに、勉強にも支障はなく、頼んだ依頼も難なくこなしている姿には、尊敬以外何もない。
ただ、隣でありがとうとニレに手を合わせた。
きっとその光景は側から見れば変に見えただろうけれど、私は本当に彼に感謝の気持ちとばかりに手を合わせ続けていた。
すると、隣から可愛らしい声が聞こえ、見上げればそこには茶髪の女子生徒達が数人立っており、こちらにズイ!と何かを差し出した
「あの、殿下これ受け取ってください!」
なんだ、ラブレターでもくれるのかな?と期待していれば、彼女の手の中にあったのは真っ赤なトマトだった
目の前の野菜に、どうゆう事?と首を傾げていれば、更に後ろに並ぶ子達も真っ赤なトマトを差し出した
「ひ、貧血だったとお聞きしました!トマトは貧血に良いと聞きましたので、ど、どうぞ受け取ってください!」
まさかの貧血に効く、トマトを差し出されて私は横に座るニレに乾いた笑みを送った。
彼が皆に貧血で倒れたと言った嘘が、こんな形で帰ってくるとは思っていなかった私は、流石に戸惑う
だけど、心配そうにこちらを見てくる彼女達の気持ちに応えないわけもいかず、ありがとうと彼女達からトマトを受け取ることにした。
大きな籠をくれたので、その中にトマトを詰めてお礼を言えば、嬉しそうに自分の席に戻って行く女生徒達
気持ちはすごく嬉しい、しかし貧血で倒れたと言う噂があるのはやはり、恥ずかしい
受け取ったトマトを、じっと見つめていれば、隣からヌッと腕が出てきて、籠ごとニレに没収された
「殿下思いな方々ですね、ですが…それ下さいね。ちゃんと魔法で検査してからじゃないと食べてはダメですよ」
「……分かってるよ」
王族だから、貰ったものは全てニレが調べてからしか食べられない、それは分かっている。
隣でぼぉぉんと魔道具で、トマトに害がないか調べ出すニレを、私は黙って見つめていた
調べ終わり、さぁどうぞと籠ごと帰ってきたトマトを掴むと、ニレに見せつける様に頬張った。
むしゃむしゃとトマトを食べる私を見たニレは、一瞬驚いていたけれど、そこに触れる事なく彼は、またノートに視線を戻した。
「あ〜美味しい!ニレにはあげないよ」
「ええ、大丈夫です。僕はトマト苦手ですから」
「…あっそう」
貧血だと皆に言った彼に、少しもの反抗のつもりだったけれど、帰ってきた言葉はトマト嫌いの一言だった…
なんだか、虚しくなりトマトを食べるのをやめれば、また誰かに声をかけられた。
次は違うクラスの女生徒達で、彼女達はまた何やら、籠を手に下げていた。
もしや、またトマト?!と警戒していれば、カゴの中から出てきたのは、黄色いバナナだった。
「バナナは貧血に良いそうなので、どうぞ貰ってください!私の家で育てたバナナなんです!!」
「そ、そうなんだ。…ありがとう」
うるうるした瞳でそう言われたら、どうしても断ることが出来ずに、ありがたくバナナを受け取るしかない
お礼を伝えれば、彼女達はとても嬉しそうに飛び跳ねながら、教室を出て行った。
立ち去った彼女達を見届ける私に、隣のニレは小さく笑っていた。
なんだかそれが癇に障り、ジロリと睨めば彼は気にすることなく、またバナナが入った籠に手を伸ばした。
「殿下、検査しますね」
「ニレ、笑うんだったら君にもトマトあげるよ、食べてくれるよね?」
ただでさえ、貧血気味のゼニスと思われていることが恥ずかしいのに、それを横で楽しんでいるニレが気に食わず、嫌いだと言っていたトマトを差し出すと、ニレは口元を歪ませて苦笑いを浮かべた。
嫌いでも一口は食べてもらうからと無理やりニレに食べさせようとしていれば、遅れてやってきたフリントが、私の手からトマトをかっさらった。
「お!うめぇなこれ!」
何も知らないフリントは、引き攣るニレと不機嫌な私を見て、どうした?喧嘩か?と楽しそうに笑った
王太子は女になりたい!-転生先間違ってます!- さくらもち @sakuramoci
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