第13話終わりと、始まり
あれから、暇な休日は終わり今日からやっと、学園に通えることが可能になった。
母から言われた休みは、ニレや従者達のお陰で何だかんだ楽しく過ごせたので、大満足な2日間だった
相変わらず愛しの弟は私を陰から観察するばかりで、全く近寄ってくる気配はなかったけれど、まぁとりあえずは彼のためにも、放っておくことにしている。
そして、今日からは禁止と言われた魔法も扱える様になった。
魔法なんて無縁だった前世と比べれば、意外とゼニスに転生したのも悪くないと、初めて思えた。
早速、朝から制服を着込んで馬車に乗り込めば、上質なクッションは乗り心地が良くて、また二度寝しそう。
流石に前に座るニレが、寝ないでください!なんて、起こすものだから、仕方なく起きていた
暫くして馬車が到着し、降りれば目の前には大きな門が迎えていた。
それはもう大きな学園で、元いた世界では考えられないほど立派な建物
周りには大勢の生徒達が登校していて、通る度にチラチラと私を見てくる女子生徒達。
痛いほどこちらを見てくる彼女達の視線に、視線を向ければ、驚くほど、きゃーと黄色い声援が飛び交った
流石に、キーンと響くかと思いきや、意外と耳に響く訳でもなく、ただ単に気分が良い
やはり、ゼニス人気は素晴らしいと、ドヤ顔で満足していれば、隣のニレがコホンと咳払いをした
「なに?」
「浸ってないで、早く教室に行きますよ」
「えー浸らせてよ」
「そう言うのはもういいですから、ほら行きますよ!」
せっかく、モテモテなゼニスに浸っていたのに、と私がぼやけば、ニレは私の腕を引っ張り教室まで連れて行く
その間、通り過ぎる私達を女生徒達は、頬を染めながら見つめていたので、ひらひらと軽く手を振れば、更に黄色い声援が響いた。
何だか、人気アイドルになった気分になりとても心地がいい
横から殿下!と低い声が聞こえてきたので、チラリと、ニレに視線を向ければ、案外彼も綺麗な顔をしていた
長く赤い髪を一つに結い、歩く度に揺らす様は確かに目を惹く。
ニレは普段から眼鏡をしているから、そこまで目立ちはしないが、その眼鏡を外せば美形なのが見て分かる
チラチラとニレを頬を染めて見つめる子達も居て、ニレの素顔の魅力に気づいた子達が既にいることに驚いた
ニレ・スフェーンとは案外隅に置けない奴
「ニレ、眼鏡取ったら全然見えない?」
「…当たり前でしょう、見えないから付けてるんです」
「まぁ、そうだよねぇ。でもさ、ニレは眼鏡取ったらモテると思うよ」
「そうですか…だったら、残念ですね。取る機会がないので」
「ふーん、じゃあ一回アネモネの前でだけ取ってみたら?」
いつもの様にスカしたニレに、アネモネの話を言い出してみれば、彼は歩く速度が少しだけ遅くなり、慌てた様に私を見た。
また、瞬きが早くなりだしたので、私は吹き出しそうになったけれど、どうにか我慢して堪えた。
「な、なんで、彼女の前で…」
「好きになってくれるかもよ?」
明らかに動揺しているニレを見るのは面白い
こんなに焦るほど、彼女の事を好いているのが分かる。
「なに馬鹿なこと言ってるんですか!」
ほのかに頬が染まって行くニレが可愛らしくて、ついつい自分の頬が緩くなっていく
未だに認めない彼に、はいはいと適当に返し、挙動不審になるニレより先に歩き、教室を目指した
私より先を歩いていたニレは、追い越した私に気がつくと、小走りになり追いかけてくるのだが、未だに殿下!揶揄わないでください!と言う彼の瞼は何度もパチパチと瞬きを繰り返している
あまりにも、分かりやすい態度に私は余裕の笑みを向けた
「かわいいなぁニレは」
そう言って笑えば、ニレは更に頬を赤らめて違いますからね!と叫んだ
もう認めちゃえばいいのにと、そう思ったけれど、とりあえずは真っ赤になって慌てる彼が可愛いから、少しだけ彼の嘘に付き合ってあげる事にした。
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