第11話似た兄妹





「ゼニスお兄様と、随分楽しい時間を過ごしたそうですね?」


私は何でも知っているのよ、とでも言いたげな表情で、イタズラに笑う妹に、フリントはただ苦笑いを浮かべるしかない


きっと、一緒に来ていた従者が、アネモネに今日の出来事を全て話したのだろう


今日は一日中ゼニスと遊んで過ごしていた事実を知ったアネモネは、それはもう羨ましいと何度も訴えてくる



酷いわ、お兄様ばかり。と何度も言ってくる妹がしつこく、流石に痺れを切らしたフリントは、次は誘うとめんどくさそうに答えた


アネモネは兄のその言葉を待ってましたと言う様に、キラキラと目を輝かせると、次は必ずよ?と念を押してくる


言い出したら聞かない妹を知っている彼は、やれやれとため息を吐くと、嬉しそうにほほ笑む妹をじっと見つめた



「ひとつ言っておくけどな、どんなに小細工したって、お前はあいつの嫁にはなれないからな、忘れるなよ?」



「なによ、別にゼニスお兄様のお嫁さんになれないなんて決まりはないわ」


「はぁ?親戚での結婚はこの国では御法度だろ?とにかく、期待するのはやめておけ」


「そんな決まりなんかクソ喰らえですわ!」


「お前なぁ…いつまでもお前の我儘が通用すると思うなよ」


「…ふん」


フリントの言葉に一気に、不機嫌になったアネモネは、窓に目線を向けると兄の言葉を無視し続けた。

彼女の自分勝手な態度に、フリントはただ、ため息をつくしかなかった。



実際、本当にこの国では近親婚はしてはいけない決まりがある。

理由は、近親婚は決して後継が生まれないからだ



500年前の大昔、この国の王様が従兄弟同士で結婚した事があった。

2人は仲が良かったらしいが、なかなか後継が生まれずに、痺れを切らした官僚達から勧められ、仕方なく側室を置いたことがあった。


しかし、それに嫉妬した王妃が狂い、王宮内が全て血に染まった。

それはもう、今でも聞くに耐えない話だ。


その事から、今後は絶対に近親婚はしないと言う決まりになったらしい。


実際たまたま子供ができにくかっただけじゃないのか?


とも思ったけれど、その当時近親婚をした者達は、皆揃って子供がいなかった。


その事実を知った王様は、国にとっても後継ができないのは困るので、この決まりは絶対に守る事になった


特に、王族は絶対的に近親婚はしてはいけないと。



その事をきちんとアネモネは理解しているのだろうか?



「お前はもっと歴史の勉強した方がいいんじゃねぇの?」


「………」


どうして、王族が絶対にしてはいけないのか?

それぐらいの勉強はしていた方が彼女の為にもいい



そう思い、アネモネに声をかけたけれど、彼女はフリントの言葉に、一瞬だけ反応を見せただけで、返事は返さず、ただひたすら無言を貫いた。 


馬車の中から、静かに外の景色を眺め続けるアネモネに、フリントは、昔叔母に恋をしていた自分と重なって見えて、もうそれ以上はアネモネに言葉をかけることはなかった。

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