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第一章
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「リリアは居るか?」
門番に尋ねる。先触れは出していないので居ないかもしれない。
王族専用の軍服姿で、フォルスワーム家の王都邸宅を訪れたユージーンは、行く前に婚約者に挨拶――というか、気が済むまで殴られようと思っていた。
重鎮たちは、鉄鎧を着ていけと聞かなかったのだが、流石にリリアはそこまで見境がないわけではない。
それに、幼いころからリリアに理不尽に殴る蹴るされてきたユージーンは、攻撃を躱すことと受け身には自信があった。
屋敷の中に案内されるまでもなく、正門までリリアがやってきた。
無言で――
ユージーンの爪先をヒールで踏んで、振り返りもせず屋敷に戻る。
「行ってくる」
――生きて帰る。そう約束できないのが悔しかった。
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